ファンがいるから

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今日は怖い話じゃないよ、少しいい話っぽいぞ!

【怖い話】ファンがいるから

ファンがいるから

「ファンがいるから」

本代のために、赤貧と成り果てていた東京暮らし。

出版会社の給料だけでは、到底、賄いきれない。

若さに任せて、夜間のバイトを続けていた。

面白さもあって、短期間で、あちらこちらで働いていた。

自称将来は、大物ミュージシャン!と言う、売れない若造たちが屯する、簡易的ステージ付きクラブが、あの当時から多かったのだが、夜中の2時、3時まで営業して、その後の掃除のバイトがある。

時間帯のせいもあって、なかなかの収入になっていた。

もう、そのクラブは、閉店したので、名前は出していいかもしれない。

G.I.JOE

古臭いジャズばかりやっているクラブで、オーナーも結構なご老齢。

戦後をイメージしたデザインの店内は、なんとなく薄暗く、流行っているとは程遠い。

どこか閑散としていて、常連しかいないと言う、先行きが危うい店であった。

そこで、週二回演奏していたのが jump dogs と言う、何度か演奏を聴いたが、懐かしのジャズにこだわり過ぎて、全く流行に乗り遅れていた。

jump dogs は、平均年齢、45歳。

ほぼ、客のいない状態では、生活苦は見えている。

そんな、困窮ジャズバンドが、どうしていつまでも、週二回のステージをやっているのか。

ジャズが好きだ!と言う、情熱やら、何やらをとやかく言っている場合ではない年である。

バンドのリーダー的存在であった、ドラムのシギヤキさん(もちろん仇名)に、聞いたことがあった。

「ステージ、変えようかとか、
思ったことないですか」

シギヤキさんは、鼻柱に、キュッとしわを寄せて、うなった。

「う~ん、そうなんだよね~。でもね、僕らにもファンがいるんだよ」

私は、驚いた。

いや、失礼。

ファンというのは、あのだらっと時間つぶしか何かのように、チビチビと安酒を飲みに来ている、常連客のことか?

いや、まず、あの手合いは、ジャズを聴きになんて来ていない。

それとも、私の出勤時間以外に、来ているのか?

「ほら、いつも、さ、アメリカ兵のコスプレで来てくれてる人たちだよ」

「へ?」

やはり、私のいない時間のようだ。

そんな、服装までして、聴きに来ている人を見たことがない。

「はは、まるで、進駐軍だよ、ここの店の雰囲気に合わせてくれてるのかな。すごく楽しそうに聞いてくれててさ」

「はぁ、そう、ですか」

けっきょく、私は、彼らのファンらしき人たちを見ないまま、
クラブの清掃を辞めた。

一ヶ月ほど経ったか。

G.I.JOEから連絡があった。

クラブを閉店するから、後片付けを手伝って欲しいと。

ああ、ついに。

私は、久しぶりに、クラブに出向いた。

ん?

心なしか、クラブの中が、明るいような気がした。

いつもの、煤けたイメージがない。

「よぉ!」

jump dogのメンバーも、クラブ閉店の現実よりも、何だか、楽しげに見えた。

「シギさん、最後って」

「ああ、今夜は、僕らのファンに会えると思うよ!」

そうか。

ようやく、会える。

進駐軍ファッションの、数少ない熱心なファンに。

相変わらずの常連客と、オーナーの昔馴染みもいる。

私は、jump dogのファンを待った。

しかし、夜半も遠に過ぎ、お開きも近くなったが、ファンの皆さんは、現れない。

「来ないのかな」

入り口のドアばかり眺めていたが、まちくたびれて、ジュース・スタンドへ行った時だ。

す・・・っと冷たい風が吹いた。

ん?

振り返ると、いた!

一番後ろにあるテーブルに、五人の進駐軍コスプレの男たちがいた。

にこやかに笑って、拍手している。

jump dogのメンバーは、それに気づいのか、演奏に熱が入ってきた。

いい演奏だ。

なかなかじゃん。

ここが閉じても、きっと、どこかのステージで、やっていけそうではないか。

全ての演奏を終えて、二回のアンコール。

そして、本当に終わった。

「あ~、いつのまにか帰っちゃってるんだよね」

シギヤキさんが、残念そうに言った。

「最後にありがとう!って言いたかったなぁ」

テーブルの上には、グラスが5つ残されている。

「あれ?」

オーナーが不思議そうに言った。

「このグラス、うちのじゃないな」

「え?」

見れば、古びたグラスで、レトロ感溢れるデザイン。

酒の匂いがするが、カラカラに乾いている。

そういえば、と、オーナーが、いつも、オーダーを取られた覚えがないと言った。

今更、言うか。

「オーナー、そのグラス、僕らにくれないかな」

jump dogは、一人ずつ、そのグラスを持って帰った。

最後まで、聴いてくれたファンの思い出だ。

今思えば、どうしても、不思議なことがある。

彼らだけ、古いドラマ見たく、白黒だったことだ。

脳は、アメリカ兵の制服だから、カーキー色だと記憶しているが、どう考えても、白黒の映像だった。

そこだけ、古めかしい海外ドラマを見ているかのように。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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