鳥が鳴く家

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今日はサリーさんをタジタジにした、大奥様が登場するぞ!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!

【怖い話】鳥の鳴く家

鳥が鳴く家

そこは片田舎ではあったが、それはそれは立派な豪邸であった。

大きく古い家柄では色々とあるのだろう。

娘さんに入り婿としてやって来る男性のことを占って欲しいとの依頼だった。

依頼者の話ぶりから察するに、どうやら入り婿となる男性を気に入っていない様子。

娘さんの惚れ込みようたるや、少しでも気に障ることを指摘しようものなら大変。

怒り泣きしながら反論し、食って掛ってくるそうだ。

娘さんとしては、私に鑑定を依頼した事も気に入らないらないらしく、不在。

家に居たくないと言い外出されたという。

まあ、仕方がない。依頼者はお母様である。

広々とした玄関で、お手伝いさんが出迎えてくれた。

私一人を案内するにしては、広すぎるお座敷に通された。

古いが質の良い畳の匂いがする。

「どうぞ、すぐに奥様がいらっしゃいますので」

馥郁たる香りのお茶が運ばれて来た。

「あ、どうも」

良いお茶っ葉使ってるなぁ……流石だなぁ……。

などと思いながら、ふとあることに気がついた。

鳥?

盛んに小鳥が鳴いている。

何処で鳴いているのだろう。

開け放たれた障子の向こうに広がる裏庭に目をやる。

しかし、鳥の声は屋敷の中から聞こえて来る。

豪邸だし奥の部屋で飼っているのかもしれない。そう思いながらも……。

「えらく鳴いてるなぁ」

呟きたくなるほど、騒がしく囀っている。

部屋に通された時には気が付かなかった。

小鳥の囀りとは、愛らしくどこか慎ましやかなものだと思うのだが違った。

忙しなく上擦った不安を煽るような鳴き声。

それは、悲鳴のようにも聞こえてしまう。

どうにも落ち着かない囀りであった。

「まあ、お待たせ致しました」

「あ、どうも」

奥様の登場だ。

部屋着でもあっても、実に品が良い着物をお召しになっておられる。

日頃から和装なのであろうか。

着物の着こなしから自然さがうかがえる。

こちらの格好は、見るからに占い師。

にわかに緊張してくる。

私は鑑定を始める前に聞いてしまった。

「鳥。飼っていらっしゃるんですか」

「いいえ、飼っておりませんが」

その言葉が、全く信じられないほどに、小鳥の囀りは続いている。それも、次第に近づいて来ている。

やはり庭で鳴いている声の反響が、屋敷内に響いているのか ?

いやちがう。ソレは私のすぐ側にいる。

鑑定に差し障りが出そうだ。

ソレは会話にすら支障をきたしそうに勢いで、座敷の中に溢れている。

ソレは、次第にヒステリックで攻撃的になってくる。

私の耳元で囀られているソレは、私の知っている囀りとはかけ離れていく。

意識がそれに引っ張られる。次第に肩が重くなっていった。

娘さんの鑑定どころではない。

この状態の原因の当たりを付けなければ、仕事ができない。

私はもう一度聞いた。

「鳥。鳴いてますよね」

伺うように、丁寧に聞いた。

「いいえ、聞こえません」

静かな怒気を含んだ厳しい声に、思わず退いてしまった。

彼女は姿勢正しく無表情だ。

いや、軽く睨んでいるようでもある。

その視線は私を値踏みするようだった。

数秒の沈黙の後、彼女はいきなり立ち上がり部屋を出て行った。

その所作は声をかける暇もなく素早く、そして綺麗であった。

えっ、何事か……。

私は一人、ポツンと取り残された。

そして鳥は激しく囀り続けている。

暫らくして、彼女は朱の盆に白い封筒を乗せて戻ってくる。

「どうぞ、ご足労おかけいたしました」

「え?」

廊下には、お手伝いさんが立っている。

先ほどとは打って変わって、酷く顔色が悪い。

つまり、もう帰れということだ。

「しかし、なんの仕事もしておりませんし。鑑定料をいただくわけには」

「いいえ、遠くからおいで頂きましたので、お受け取り頂きます」

お受け取り頂きますって、断定か。

少々、ムッとはしたが、穏やかさの欠けらも無くなったお客様に、逆らうのは商売柄分が悪い。

どうしようかと考えるも、絶え間なく囀り続けるソレに思考が集中できない。

ソレはジワジワと私の体に入り込もうとする。

耳から入り三半規管を通じ脳に染みてくるようだ。

鼻から、口から入り空気を押し退け気道を押し広げながら侵入してくる。

息が苦しい……これはヤバい……。

私は、仕方なく白い封筒を受け取り腰を上げた。

玄関先で、鑑定料の白い封筒をお手伝いさんに預かってもらおうとすると、大袈裟なくらいの拒絶をされる。

「お願いします、やめてください。お受け取りください、私がお叱りを受けます」

押し殺した声で、ひたすらに否定された。

仕事をしていないのだから、もらう訳にはいかない。

しかし、この人にとっては受け取らないことが、私に依頼料を受け取らせることも仕事の内か……。

それにしても、どこで鳴いているんだ。

座敷を後にし、長い廊下をたどり玄関まで来たというのにソレは追いかけてくる。

息も苦しい。頭が割れそうだ。この場から早く立ち去りたい。

私は、景気良く膨らんだ金持ちの矜持を受け取り、頭を軽く下げた。

当たるつもりは無かったが、イライラのあまりお手伝いさんに聞いてしまった。

「この鳥、どこで鳴いてるんですか」

お手伝いさんは、目玉が飛び出しそうなほど見開き、土気色の顔色はさらに悪くなり、首をブルブルと横に振る。

「知りません。私は何にも知りません」

こっちが退きそうになる、ひどい反応だ。

「あきさん」

私とお手伝いさんは、飛び上がった。いつの間にかお手伝いさんの後ろにお母様が来ていたのだ。

「あきさん。もう、いいから」

お母様は、私を睨みつけて言った。

「失礼を致しました。本日はありがとうございました」

暗黙の、早く帰れコールである。私は、軽く頭を下げて豪邸を出た。

あっ……。

豪邸を一歩出た途端、囀りが消えた。

頭重もしない。重かった肩は軽くなり、呼吸も楽になる。

結局。あの鳥の狂ったような囀りが、何であったのか、全くわからなかった。

紹介してくれたお客さんに、一応の報告をしたのだが、やはり何の情報も得られなかった。

あの屋敷は、鳥の鳴く家として、私の記憶に残っている。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!


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