与作の話-黒い球

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今日は罰当たりの与作の話だよー!!

【怖い話】与作の話黒い石

黒い球

与作が”土産”と称して持って帰ってきたモノに、曰く因縁がなかったことがない。

与作は、そういう意味では、まさに千載一遇を逃さないと言ってもいいと思う。

運が良いのか悪いのか。

いや、生き延びているのは、運が良い、というか、または、驚異的な悪運の強さのせいか。

どちらかは明白ではないまま、なぜか、続いていた私と与作の腐れえにし縁。

与作の海外放浪のほとんどがアジア方面だ。

今回の話も、与作のとんでもない土産物について。

「ほい、これ、やんよ」

私は、与作のその言葉と代物を絶対に、すぐに受け取らないことにしていた。

「ああ、何、それ」

まず、何をどこからどんな経緯で持って帰ってきたのか、それを聞いてから判断することにしていた。

与作がへらへらと笑いながら手に持っていたモノ。

それは、黒い玉だった。

「これか? いひひ」

与作の愉快そうな顔は、要警戒である。

私が胡散臭そうな顔をしていると、ことさらに愉快そうになる。

「おいおい、バチ当たるぞ、これはなぁ、ありがたぁい人からもらってきたんだぞ」

バチあたりから、バチがあたるぞと言われた。

これはますます、タダではすみそうにない予感。

「おいら、エベレスト見たくなってな、金ねぇし、登れたりしねぇから、麓まで行ったわけさ」

「ほう」

世界最高峰の誉れ高き聖山、エヴェレスト。

エヴェレストの麓には、登山客が各国から集まる街や村があるらしい。

今回の旅で、与作が尋ねたのは、登山家なら知らない者はいないナムチェバザールという。

エヴェレスト登山入口の街で、標高3440メートル。

聞いただけで胸苦しくなりそうだ。

「おいら、そこでさ、しばらく住み込むことにしたんだ」

「へぇ」

エヴェレストは女神のおわす山であると言う。

この場を借りて、バチあたり男の長逗留をお許しくださった寛大なる女神のお心に感謝を捧げる。

与作は、ナムチェバザールにある茶屋のような店で、雑用をする代わりに、宿を提供してもらったらしい。

ところどころ穴が開いたり、破れたりしているテントが屋根という店で、不明な成分のチャイや、バター茶などを作って、旅行客に供していたのだという。

おいおい、素人もいいところだというのに、よくもまあ。

「よく、淹れられたね、チャイ」

「ああ、そこの店で覚えた、今度作ってやんよ」

いらない。

飲みたくない。

貧しくも活気溢れる街、ナムチェバザール。

与作は、けっこう、気に入っていたらしいが、働き始めて2週間ほど経った頃のある朝、いきなり、店を追い出されたという。

「なぁに、やらかしたの」

与作は、うへへとは笑わず、不満げに肩を竦めた。

ほぅ、与作にしては珍しい。

「別に、何もやらかしてねぇし!」

「でも、追い出されるなんてさ、なんかやったとしか思えないじゃん」

与作は、黒い玉を掌の上でコロコロさせて言った。

「こいつを店のオバハンに見せただけだよ」

やっぱり、受け取らなくてよかった。

何かある。

まったく光を通さない、つややかな黒い玉。

「だいたい、その玉、どっから手に入ったんよ」

私は、如何わしいモノを見るような顔を隠さなかった。

「もらった、うへへ」

出た、与作のウヘヘだ。

「どぉこで」

与作が働いていた店のおばさんは、とても健康的な早寝早起きだったらしい。

与作はたまに、メーカー不明のぬるいビールを閉じた店先で飲んでいた。

通りは嘘のように静かになり、たまに警察官や軍人のような制服の男がウロウロとしているだけ。

「おいらさ、ぬるいビールで頭ぼーっとなってたんよ。そしたらさ、珍しいってかさ、外国人つうか、登山するっぽいやつらがさ、向こうからぞろぞろ来んのよ」

私なら、その時点で、その場から消えると思う。

「ナムチェに来てからさ、夜んなって、あんな集団、見たことねぇし」

「はぁ、それで」

与作は、目を凝らして、歩いてくる連中をしげしげと見たという。

「ああ、なんつうか、まあ、山登るかっこしてっからさ。 それに、あれ、外国人ばっかだよな、
夜中に山登るかっこして歩き回るなんざ、ねぇよなぁって。おいら、じっと見てたんだよ」

おかしいと思わないのか、この男は・・・。

「で?」

「うん、全部で20人くらいいたっけか。なぁんかさ、フラフラ、ふらついてんのな。もしかして、遭難しかけて、夜中にここまで来たんかってさ。でも、警察も兵隊もいねぇし、なんだかなぁ」

与作は、その不気味な群れが、ぬるいビールを飲んでいる自分のまん前を、のろのろ、ふらふらと歩いて行くのをずっと見ていたらしい。

よくもまあ。

「そんでさぁ、そいつらが歩いて来た方見たらさぁ。 道が白いのな」

与作は、ご丁寧に、その白い道を見に行ったという。

その白いモノは、雪のように冷たい、いや、雪であった。

「へぇって思ってさ、冷てぇって思ったら、あれ、雪だよなって、街ん中で雪なんて見ねぇし! でも、あれ、雪だった、ウヘヘ」

ウヘヘじゃねぇし。

「で、その黒い玉は」

「おお、おお、そうそう!」

与作は、翌朝、その話を店のおばさんにしたのだが、おばさんは青くなって、与作の手を引っ張り、僧侶たちのいる寺に連れて行った。

「いや、まったく、何行ってんのかわかんねぇけど。おばはん、坊さんたちにペコペコしながら手ぇあわせてさ。そいで、おいら寺に置いてけぼり、うへへ」

与作は、訳がわからないまま、寺で3日間、お経を上げられ続けたという。

「もう、耳がイカれる!て感じ。香はガンガン焚かれるし、すんげぇ人数からお経上げられるし、
さんざんな!」

聞いただけでも、与作は相当な何かを見てしまったらしいとわかる。

そして、年配の僧侶から、まだ、この街にいるつもりなら、と小さな麻袋を渡された。
その中に入っていたのが、この黒い玉だった。

与作は、貰い物を単純に喜ぶ習性がある。

「やった、ラッキー」

寺から出て、インターネット・カフェで知り合った通訳の若者に、一連の話をしたところ、とても驚いた顔をされたらしい。

誰が聞いても驚くと思う。

「なんかさぁ、そいつの英語も怪しいっつうか、聖なる山から、なんか、お化けが降りて来ることがあって、そんで、それに出くわしたら、呪われる~ってのな」

おばさんは、親切にも与作をそのまま見捨てずに、寺に連れて行ってくれたわけだ。

山は女神の聖域。

そこで汚れた屍を晒すなど、神罰覿面であろう。

望郷の亡者と成り果てた登山者たちは、祟りを成す魔物と化して彷徨うのだ。

見も知らぬ風来坊のために、無償でマントラを唱え、挙句に何某かの守りのようなものまで。
ありがたく思え、馬鹿者よ。

「まあなぁ、観光客と登山客でもってる街だからさぁ、変な死に方したら、まずいんでねぇの、うへへ」

私は、呆れ果てて恩知らずの顔を見た。

「んで、ほい、これやんよ」

悶絶しそうになった。

ここで、いらないと言ったら、売り払うであろう。

しかし、まず、もらう気になれない。

案の定、与作の定期的露店に、黒い玉が置かれた。

そして、案の定、あの松田財閥が高額で購入した。

まあ、いいか。

お守り?

らしいから・・・。

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約束だよ!!

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