シャネルの女

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サリーさんの体験した怖い話だよー!!

シャネルの女

よくある話だが、私の通っていた高校は、バイト禁止。

私の読書量からして、隠れてバイトでもやらないと、小遣いで購入できる本だけでは、まず、満足できない。

衝動的な万引きを働かない為に、校則違反をする、と言っても過言ではない。

行き着けの本屋のおじさんから紹介されたのは、大学の教授の私設図書館の整理であった。

バイトというより、お手伝いレベルだ。

給料も図書券。

教授が、使わないまま、貯めに貯めた図書券をバイト代としていただくのだ。

まあ、私にとっては、いいバイト料だ。

私設と言っても、なかなかの広さで、貴重な書籍が何冊もあった。

大学のお仕事や出張で忙しく、整理が出来ないまま、積ん読状態。

書籍の記録と整理も等閑になっていた。

人文科学とか、近代史の教授で、その関係の書籍が、ずらり。

夏休み中、毎日、書籍の整理に勤しんだ。

本に触る時に、手袋をするように言われる貴重な書籍もある。

書名が、ラテン語だったり、どこかの言語らしいが、まったく、わからなかったり。

とにかく、意味不明のまま、書籍名を書き写した。

そんな、難しい稀少本の中に。

のらくろ・・・。

あの、ひょうきんな兵隊わんこだ。

ある意味、昭和の文化、と言える。

その上、初版本であり、鍵付きの書棚にズラリと並んでいる。

ふぅん・・・。

貴重なことはわかるが、あまり、読む気にはならなかった。

せっせと精を出してはいたが、夏休みももう半ば。

あまり、のんびりはしておられない気になってきた。

教授は、図書館にいる時といない時があった。

ぶっちゃけ、いない方が良かった。

いると、何かと小間使いにされるからだ。

「あ、あの本、取ってきて」とか、「そろそろ、コーヒー淹れて」とか。

私は、あなたのゼミの生徒ではないのだが。

まあ、図書券のためだあれは、実に穏やかで静かな日だった。

あれは、実に穏やかで静かな日だった。

ん ?

大きな窓際の床に、淡いピンクのシャネルのスーツを着た若い女性が座り込んで、本を読んでいる。

誰か入ってきたっけ ?

ごくたまに、教授の客人やゼミの生徒が来たりもする。

見覚えはないが、その中の誰かであろうと思っていた。

その女性は、ひたすら、本を読んでいる。

しかし、床に座ることないではないか。
イスとテーブルがあるのに。

何を読んでいるのかな?と、何気に見た。

のらくろ。

ほう。

ファッションに、まったく似合わないチョイスだ。

シャネルの上品な淡いピンクのスーツに、クリーム色のハイ・ヒールで、のらくろ。

まあ、いいやと、書籍の整理を続けた。

ところが・・・。

「んー」

次の日も、まったく、同じ場所に、彼女はいた。

静かに読み耽っているのは、のらくろ。

漫画の整理は、先生から頼まれていなかったし、別に、なんということはないが、年の頃なら、24~25ぐらいで、のらくろ。

私は、そんなに面白いのかなぁと、ちょっと興味が湧いてきた。

彼女の邪魔をしたくなかったので、彼女が全巻読み終わったら、読んでみようと思った。

結局彼女は、一週間。

毎日のように、のらくろを読んでいた。

ここで、私は少し、首をかしげてしまうことに気がついた。

着てるもの、同じじゃん。

ずっと、シャネル風の淡いピンクのスーツだ。

お気に入りにしたって、ここまで同じ服っていうのも、どうかと思う。

ましてや、のらくろ。

いつも、床に座って、読んでいる。

テーブルに付いていたことがない。

窓からさす、太陽の光の中。

彼女は、ひたすら、のらくろを読んでいる。

そして、いつの間にか、いなくなっているのだ。

だいたい、五時くらいには、もういない。

「何の仕事してるのかな」

いい大人が、一日中、漫画が読めるような、夏休みなんてのはないだろう。

私は、次々と湧いてくる疑問を貯め込みつつも、せっせと書籍の整理をやっていた。

そんなある日。

彼女が動いた !

お・・・!

私は、思わず観察してしまった。

彼女は、のらくろの棚の前に、じっと立っている。

端正な横顔だった。

「あ・・・、動いた」

読み終わったのかな、のらくろ。

彼女は、す・・っと腕を伸ばして、のらくろの隣の書棚に並んでいたサザエさんの一巻目を取った。

今度は、サザエさんか。

やはり、ファッションは変わらない。

彼女は、サザエさんの一巻目を持って、やはり、窓際の床の上に座った。

また ?

別に、悪いことでもないか。

私は、そのまま、彼女の邪魔にならないように、書籍整理のラスト・スパートに入った。

夏休みも、もうすぐ終わりだ。

けっきょく、彼女が、いつやって来て、いつ帰っているのか、まったくわからないまま、私のバイトは終了する。

わかっているのは、シャネルのスーツで、愛読書は、昭和初期の漫画ってことくらいだ。

教授が、図書券で膨らんだうれしい封筒をくれた。

「おお、ごくろうさん! ありがとね」

「いえいえ」

私は、ちらりと窓際を見た。

彼女が、サザエさんを読んでいるのが見えた。

「あの・・・、先生」

「ん? なに?」

私は、小声で、聞いた。

「あの・・・、先生んとこの、生徒さんですか?」

「誰か来た?」

「はい、あの、窓際に、あれ?」

誰もいない。

さっきまで、彼女が・・・。

私は、思わず、漫画の書棚に行ってみた。

書棚の前の床の上に、サザエさんの一巻目が落ちている。

「あれ?」

わけがわからないまま、サザエさんを書棚に戻した。

「お、サザエさん、好きかね ! 読んでもいいよ、のらくろも復刻版だけど、全巻あるから」

「あ、はぁ」

図書券も、思いのほか、たっぷり目にいただけたことだし、学校も始まるし、もう当分、来ることもないだろう。

彼女が、誰で、どこから来ていたのか?

いつ、どこから、帰って行ったのか?

まったく、わからない。

入口は、私がいたテーブルの横、一か所だけだ。

誰かが、出入りするのが、判らないはずない。

私は、たまに思い出した。

彼女は、一人。

おしゃれなスーツで、

今度は、サザエさんを読んでいるのかなと思ったが、確かめる術もなく、そのまま、図書室には、行かなくなった。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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