サクラ雨

スポンサーリンク
Youtube

これは、サリーさんが聞いた話だよー

サクラ雨

桜雨

桜の人気を妬むのか。

桜が満開の頃に限って、雨風の日が多くなる。

花見客も、しのつく春先の冷たい雨に、宴の日を先送りにする。

春の長雨。

櫻雨。

薄桃色の花弁が、惜しげもなく散らされてしまう無情さ。

温かくなりかけた春風ならいざ知らず。

湿った、細い雨が交る冷たい風が、宴気分を消してしまう。

「櫻雨」と言えば、思い出す話がある。

この話は、前に聞いた話だ。

山好きな男がいた。

三度の飯より、恋人との時間より、山に登りたがる男だ。

殆どが単独登山であった彼が、あの日を境に、単独行を止めた。

山に行く回数も、嘘のように減ったのだ。

恋人は、喜んでいたが、私は、不思議でならない。

今更、恋人への愛に目覚めたか?など、まったく、信じられない。

しかし、あまり聞く気にもなれなかったもので、気にしないふりをしていたのだが。

「あんさ」

居酒屋で、知人の集まりがあった夜のことだ。

彼は、いきなり、聞いてきた。

「あんさ、いや、なんやわからんもん、見たんやけど」

「なん、それ ?」

彼は、言おうか、言うまいかと、迷っている様子だった。

私は、彼が話し始めるまで待っていた。

「あれ、なんやったんやろって」

「だから、なんなん」

彼が最後にした山は、たしか、日本アルプスのどこかだ。

「夜桜が見れるけ、山小屋使わんで、キャンプしたっちゃ」

「ふぅん、そんで ?」

ふと見ると。

彼の額に、うっすら冷たい汗が浮いていた。

「夜になってから、雨が降って来てから、あぁあ、思ってね。キャンプの入口に座ってから、 酒飲みながら、夜桜、見よったら」

彼は、額の汗を掌で拭った。

彼の脅えた心臓の音が聞こえてきそうな気がした。

「女の声がしてきてから・・・。まわり、真っ暗やけ、どっからしよるかわからんでから」

「うん、で ?」

「なんか、名前みたいなん、呼びようけ、誰かおらんごとなったんか思って、手伝おうか思ったんやけど」

「ふん」

彼の冷たい汗は、頬をつらりと流れた。

「目の前、えらい痩せた女が」

私は、彼が酒のグラスを持ったまま、固まっているのを見た。

「四つん這いで、目の前、走って行ってから」

薄汚れた白い着物を着た、痩せさらばえた女が、四つん這いで、彼の前を横切ったという。

それも、獣のような速さでだ。

髪を振り乱し、凄まじい勢いで。

彼は、恐怖で声もあげられぬまま、深い山の闇を見つめていた。

我に帰った後、キャンプの入口を締め、シェラフに潜り込んだのだが。

「キャンプの周りをまわっとるんよ。ずっと、まわっとる音がしてから」

彼は、けっきょく、朝まで眠れなかったらしい。

朝の光の中、彼は、さらに戦慄した。

キャンプの周りには、何かが擦れたような跡や、手の跡がいくつも残されていた。

キャンプにも、べたべたと手形の泥があちこちに付いていた。

予定を切り上げて、早々に下山した。

「あれ、何やったんと思う?」

「うん、さあ、ね」

わかろうはずもない。

彼は、その日から、山はおろか、櫻雨の日も嫌悪するようになってしまった。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、下のコメント欄に一言ください。そしてこのHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました