櫻忌

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今日はサリーさんが体験したお話だよー

【怖い話】桜鬼

櫻忌

何気に親しくしていた女性が亡くなったのは、惹き込まれてしまいそうな満開の桜から、朱鷺色の花吹雪が巻き起こっていた日であった。

彼女の家に行くには、夢幻境の如く狂い咲く桜の並木道を通る。

あまりに美しくて、あの日をなかなか忘れられないでいる。

趣味の好い女性で、古物の収集家でもあった。

そして、桜が大好きだった。

桜の頃になると、花見をするからと、手作りの弁当を拵えては、私を呼んでくれていた。

早過ぎはしたが、彼女らしい季節に逝ったものだと、誰もが思っていた。

葬儀は、彼女の姉と妹、あとは、親しかった何人かだけ。

実に慎ましやかに取り行われた。

しかし、彼女の魂を迎えるが如く、燃え盛るように咲き誇る桜の満開ぶりで、どこか賑やかしさすら感じてしまった。

香典返しは、葬儀に似つかわしくない「桜湯」であった。

冷笑する者もいたが、私は彼女らしくて良いと思った。

葬儀の後、家に帰って、「桜湯」を淹れた。

桜の香りが福与かに薫った。

はぁ・・・。

もう二度と彼女に会えないのだな、と瞼の裏が熱くなった。

その日の夜からである。

妙な夢を見た。

さわさわ、はらはらと舞い散る桜。

足下には、桜の花弁がしっとりと積んでいる。

その只中に、亡くなった彼女がいた。

ただ、様子がおかしかった。

笑っている。

目を見開いて、箍が外れたような笑い方であった。

夢の中らしい奇妙さで、笑い声が全く聞こえない。

ゆらり、ゆらりと身体を揺らしながら、激しく笑いつづけているのだが、無声映画を見ているように、まったく、何も聞こえないのだ。

恐ろしくなった。

正気を失っている彼女を見たくなかった。

がくがくと肩を揺すり、目はぐるりと上目になり、両手をだらりと胸の前に垂らし・・・。

ただ、ただ、笑いつづけている。

名前を呼ぼうにも声が出ない。

自分の歯軋りで目を覚ました。

全身が疲弊していた。

まあ、一夜の悪夢よ、と思い忘れようとしたのだが。

悪夢は、つづいた。

次の日も、次の日の夜も。

私の方が、おかしくなりそうだった。

いったい、彼女は、何が言いたいのだろう?

この世に未練を残しているのなら、それなりに、何かを言ってくれればよいのに。

祟られる覚えはない、と微かに怒りすら感じた。

同じ悪夢も、五日目のこと。

私は、出ない声を振り絞り、ついに叫んだのだ。

「なんで、私なんだっっっ ! ! どうして、私 ?! 何が言いたいのっ !!」

耳には聞こえないが、全霊で叫んだ。

すると。

彼女は、ぴたり・・・、と笑うのを止めた。

そして、なんとも言いようのない、心底から恨めし気な目で私を見た。

ぞくり、とした。

いきなり、あたりが真っ暗になり、目が覚めた。

もう、夢は見ないだろう、とわかった。

けっきょく、未だに、理由はわからない。

冷静になって考えたが、人は知らずの内に、妬みや恨みを買っていることもあるかも知れない、と・・・。

そんなことくらいしか、自分を納得させることはできなかった。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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