人形虐め

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「人形には魂が宿る」という怖い話は沢山あるけれど、怖い人形ばかりじゃないよ!! というお話だよー!!

【怖い話】人形虐め

人形虐め

「人形苛め」

東京激貧時代は、バイト三昧の日々。

体力に自信はまったくなしであったが、働かなくては、金は入らない。

つまり、本が買えないのだ。

好奇心も手伝って、様々な職種を経験した。

その中でも、なかなか気に入っていたのは、演劇の裏方手伝いである。

舞台芸術の経験は、まったくなかったが、何度も働いているうちに、慣れてきていた。

紹介から紹介で、いくつかの劇団やパフォーマンス・グループと知り合いにもなった。

これが、なかなか、楽しい。

彼らも、そんな裕福ではないので、バイト料は低かったが、けっこう、長く続けた。

そんな引っ張りで、人間の舞台ではなく、人形の舞台の手伝いをすることになったことがある。

人形劇団なんて、初めてだったので、何をやっていのか、まったくわからない。

教えられた住所に到着すると、彼らの事務所は、ほぼ倉庫状態であった。

人間の演劇道具の倉庫よりも、ごっちゃごちゃに詰め込まれているように思えた。

幅50㎝程しかない隙間を縫って、奥へと入って行く。

「おっと?!」

これは、なかなか。

当たり前だが、ずらり、と人形が並んでいる。

壁に隙間なく、人形が吊り下げられていた。

何とも言えない迫力がある。

妙に艶のあるお姫さまや、濃い髭の王さま、子供向けとは思えない醜怪な怪物や悪魔、奇妙な動物など。

じっと見つめることが出来ないほど、不思議な生命力を感じた。

「おお、ご苦労さん!」

舞台監督は、美大卒の変わり種で、エネルギッシュな人だった。

舞台の道具で壁が見えない、狭い事務所に案内されたが、そこに、もう1人の男性がいた。

「こんばんわ」

挨拶をしたが、無視。

ムスッとして台本らしきものを読んでいた。

こういう業界は、変わり者が多い。

「いや、暑いね~! うちは夏休みが掻き入れどきなんだけどね ! こう暑くっちゃ、人形たちもまいっちゃうよ、はははっ!」

監督さんは、声も性格も元気でわかりやすいが、その男は、無愛想で、挨拶も返さない。

まあ、気にしないでおこう、どうせ、話してもくれそうにない、と早速、仕事に掛かった。

なんのことはない、慣れる、慣れないどころか、初日から、多忙を極めた。

演目に合わせて、人形たちをバンに運び込むのだが、通常人の考えている以上に、人形たちの扱いは、特殊であった。

「あ! それ、それ、ダメだから! 白雪ちゃんは、それ、キライなんだ!」

白雪ちゃん。

他にも、王子様、山羊爺さん、リリー女王様など。

人形の運び方ではなく、抱え方をいちいち、注意された。

「あ、すみません」

「ごめんね~、人形ってさ、機嫌損ねるのよ! それやっちゃうと、もう、たいへんなの、ははは!」

何がたいへんなのかは、全くわからない。

だが、雇い主の言う事は聞いておくものだ。

なるほど。

よほどの人形好きか、言われた通りに動いてくれる者しか、長続きしそうにない仕事だ。

私の雇用期間は、2週間の契約であったのだが。

どうやら、舞台監督に気に入られたらしい。

「よかったさ、もう2週間、お願いできないかな!」

少し迷った。

人間相手ではないのに、妙に気を使う仕事だったからだ。

文句も言わずに、機嫌だけ損ねる俳優なんて。

しかし、割と仲良くなっていたスタッフの1人で、私より年上の女性、Mさんからも、頼まれてしまった。

「お願い、あなた、人形たちから好かれてるみたいだし」

え?

人形たちから、好かれているとは?

「あ、はぁ、そ、そうですか」

マジか、見当もつかない。

しかし、掻き入れ時と言うこともあって、バイト料が上乗せになったのは見逃せない。

人形たちの抱え方も、覚えてきたことだし、まあ、いいか。

けっきょく、次の公演も手伝うことになった。

例の無愛想な男は、脚本を書いたり、人形製作や仕入れの担当であるらしい。

相変わらず、話をするどころか、反応もしてくれない。

舞台監督さんや、スタッフさんたちの元気さの中、一点の黒い染みのように見える。

あれは、公演の準備で、夜遅くまで残業していた日のことだ。

監督やスタッフは、劇団を支えるために、副業も頑張っているので、少し事務所の片付けでもしておこうかな、と倉庫から出て、人形の部屋の前を通り過ぎかかった。

ガシヤッ

「あ、やばっ!」

人形の部屋の中から、嫌な音がした。

壁から落ちたりしていたらたいへんだ。

ドアを開けようとして、ふっと躊躇した。

中に誰かいる。

ガシャッ !

ガシャッ ・・・!

ドアの隙間から、オレンジ色の明かりが漏れていた。

誰だろう。

やめときゃいいのに、ドアの隙間から覗いた。

ガシャッ !  ガシャッ !

その風景を見て驚愕した。

「この・・・っ! こいつっ・・・! 木偶のくせに・・・っ!」

例の無愛想男が、人形を虐待している。

頭を叩き、グラグラと揺らし、腕や足をねじ上げる。

メキリッ、と嫌な音がした。

ブツブツと憎しみが籠った呟きが聞こえる。

「言うこと聞いてりゃいいんだっ! 俺のシナリオ通りに動けよ、馬鹿!」

相手が人間ではない分、その数倍、異様に見えた。

心臓が、恐怖と嫌悪でばくばくした。

こみ上げる吐き気を押さえ込みながら、その場から急いで離れた。

舞台監督に伝えたものだろうか。

あの男は、いつもああやって、人形たちを苛めているのか。

私は、善人ではない。

この劇団とだって、付き合いが始まったばかりだし、あんな異様な男から、恨みを買いたくない。

ここは、沈黙を守って良しとするか。

それとも・・・。

翌日も、人形たちを移動のバンに乗せながら、ずっと考えていた。

「いてっっ!!」

リリー女王様を抱えて運んでいたら、手首と肘の中ほどに、鋭い痛みを感じて驚いた。

まず、人形を落とさないように、と慌てて、バンの荷台に座らせた。

「いて~っ!」

何か刺さったかな、と腕を見ると。

なんだ・・・これ・・・。

微かに血が滲んだ小さな穴が二つ。

ヤバい、虫がわいたのかな、とは、まったく思えない。

これは、どう見たって、虫以外の何かに、噛み付かれた痕だ。

私は、思わずリリー女王様を見た。

当たり前だが、小さな愛くるしい口をしっかりと閉じている。

「まさか・・・ね」

リリー女王様のドレスに、人に噛みつくような虫がいては困る。

私は、リリー女王様の薄青いドレスを調べた。

あ・・・

ドレスに隠されて見えなかったが、リリー女王様の腕や脚は、素人の私にも分かる修繕の跡だらけだった。

嫌な記憶が鮮明によみがえった。

「はぁ・・・、女王様、そりゃないよ」

どうして、私なのか。

バイト料の為に、沈黙を決めた私に何をしろと。

Mさんが、私は人形たちに好かれていると言っていた。

私は、その日の公演の後、舞台監督に、話した。

あの男は、人形の製作もやっていたので、人形たちが虐待されていることに気がつかなかったと言う。

つまりは、自分で壊して、自分で修繕していたわけだ。

人形の制作者と脚本家を失った劇団は、一時的に活動を休止することになった。

結果的に、人形たちを助ける事になったとは言え、私は、ものすごく気が重かった。

「まあまあ、また、始めるからさ、そん時は、また、頼むよ、ははは!」

監督も、スタッフも、笑って私にお疲れさん!と言ってくれた。

Mさんは、別れ際に、ちょっと含みのある笑顔で言った。

「ほんと、再開したら、また来てね、あなた、人形たちから好かれてるから」

いまだに、どこが好かれていたのかわからない。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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