夢見の花見

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今日の話は怖くないよ!! サリーさんが14歳の時、最高の花見ができたというお話。

【怖い話】夢見の花見

夢見の花見

この話は、私が、14歳になった年の春、真っ盛りに本当にあったことだ。

従兄弟が山遊びに誘ってくれた。

春の山は、当たり前だが夏ほど暑くなく、虫も少なく、風も程よく冷たくて、いいものだ。

車で、1時間ほど走って、山歩きができる山道がある場所に到着した。

吹く風は暖か。

水色の空は、どこまでも澄んで、穏やかな太陽は柔らかく燦々と。

これだけでも、十分春を満喫できる。

従兄弟たちと、公園の脇から、上へと続く細い山道を登って行った。

木々の甘い香りが春らしい山林の中を、ゆっくりと歩く。

あっ

私は木の根元に、妙に鮮やかな色をした木野子を見つけた。

「きれいだな」

まるでおとぎ話か何かに登場しそうな、鮮やかな赤い木野子であった。

私は、つい見惚れてしまって、立ち止まっていた。

あれ?

前を歩いていたはずの、従兄弟たちの姿がない。

辺りを見回しても、誰もいない。

空高く囀る雲雀の声が聞こえてきたが、そのほかの音は、一切なく。

「え~」

私は、困った。

こういう時は、やたらと動かないほうがいい。

それだけは、わかっていた。

ちょっと大きな木の根元に座って、水筒のお茶を飲んだ。

「ふぅ・・・、どうしよ」

とにかく、待ってみるしかないかなと。

思えば、木野子なんかに見惚れていたせいで。

そう思って、木の根元を見ると。

「あれ?」

あんなに色鮮やかだった木野子が、見当たらない。

立ち上がって、そこいらじゅうを探したが、そんな木野子は一本もない。

見間違い?

いや、たしかにあった。

だから、従兄弟たちと逸れたのだ。

「はぁ・・・」

ため息を吐いて、ふと、林道の奥を見た。

ん?

やや薄暗い林道の向こうを見ると。

「わぁ・・・!」

私は、思わず、林道の奥へと走って行った。

そこには、世界中に、薄桃色の花弁の雪を降らせるかのような、大きな桜の樹があった。

春の薄青い空を覆う花盛りの枝ぶりも見事なり。

柔らかな風と桜の花弁がゆらゆらと混じり合い、桃色の薫風となって吹く。

慎ましやかな香りが、辺り一面に満ちていて、眩暈を起こしそうになった

こんな美しく、豪華絢爛な桜は初めてだ、と心底から感動した。

山桜は、普通、人の手に世話をされていないせいか、こんな豪勢に咲き誇るものではないと思っていたのだが。

思考が飲み込まれているのを感じるほどの美しさ。

何もかも忘れていたかもしれない。

いや、忘れていた、なにもかも。

桜の樹の幹は、とても太くて、逞しく、手のひらを当てると、春の太陽に温められていたのか、素朴な温もりが心地よかった。

ああ、気持いいな、このまま、ずっと春ならいいのに。

そう思った時だった。

がくんっ!

身体がどっと重くなって、目の前が真っ暗になった。

はっと気がつくと、私は、倒れていた。

心配そうに覗き込む従兄弟たちの顔。

その上、もう辺りは夕暮れの様相である。

従兄弟たちによれば、私は、林道の奥で身体を丸めて、倒れていたというか、眠っていたというか。

まるで昼寝の為に丸くなった猫か狐のようであったという。

そこは、ちょっと開けた場所で、古くて小さな。

もう、使われていないような、お社があったそうだ。

昔は、お参りに来た人もいたのかもしれないが、山道の奥で、すっかり、忘れられていたようだ。

神様は、もう、そこにはお出でにならないのであろうが、お社があると、人ならぬモノ、まつろわぬモノが住むという。

それにしても、あの満開の桜。

私は、今でも、あの桜が、日本一だと信じている。

思えば、たった一人で、最高に贅沢な花見であった。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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