掛け軸

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サリーさんの子供の頃のお話だょ~

掛け軸


私が、六歳の時の話。

私の母親の実家は、 行橋市の駅近くにあった。

小さな町で、駅前とその周辺にだけ、店や人家が固まっていた。

そんな中に、相当、古い小さな旅館が、なぜか、斜向かい同士で商っていた。

こんな小さな町なのに、旅館が二軒もあるなど。

案の定、二軒の仲は相当険悪で、表通りで掴み合いの喧嘩をするまでになっていた。

あれは、ぎらぎらとした夏の午後であったと思う。

日差しが強すぎて、辺りが白っぽく見えた。

私の一族には、私と私の姉しか子供はいなかったので、遊び相手になってくれる年頃がいない。

母親に連れられて来たはいいが、毎度、暇を持て余すことになる。

退屈凌ぎに、一人で、ぶらぶらと歩いていていた。

なんというか。

何かを感じて、立ち止まった、と思う。

何を感じたのかは、わからない。

だ、何かに呼ばれたような気がしたのだ。

きょろきょろと辺りを見回した。

いつの間にか、あの険悪な仲の、旅館と旅館の間に立っていた。

開け放たれたガラスの引き戸。

向かい、真っ正面の壁に、ひどく古く、茶けてしまった掛け軸が掛けられていた。

その掛け軸に描かれていたのは、醜怪な幽霊であった。

冷たい汗が、つらり、と流れた。

手入れが悪いのか皺や罅割れがあり、それがまた、描かれた幽霊をさらに醜怪に仕立て上げている。

ばらりと両側に落ちた髪、腫れ潰れているような瞼が薄っすらと開き、ひん曲がった口は、気味の悪い笑いを浮かべていた。

もう、掠れてしまって消えている箇所があるが、悍ましい(おぞましい)幽霊は、絵から抜け出たい執念を露わにしているようだった。

私は、夢中で走って帰った。

しばらくは、見たこともないような不気味な幽霊に悩まされていたが、時間が経てば、子供のことだ。

なんだか、恐ろしい夢でも見たのかもしれない、と、思うようになった。

そして、嫌な因果は、幽霊の掛け軸をかけていた方の旅館から始まった。

盆を控えた8月、その旅館が火事になったのだ。

不審火による火事、と判定されたが、近所の人々の間に、不気味な噂が流れた。

「あら、Kがやらしたけ」

姻戚関係がある斜向かいの旅館の主人であるKさんが、うっとりと火事を眺めていたと言う。

Kさんは、陰で金貸しのようなこともしていたらしく、

脅せば放火くらいやってのける連中がいる、と。

疑いと噂は、川底の柔らかい砂のように、じわじわと小さな町を流れ続けた。

私には、別に、誰が、何をしでかしたかなど、どうでもよかったが。

記憶違いとして片付けられない出来事があった。

不審火から、何年か経った夏。

あの旅館が燃えた痕跡は消され、紐を張られた空き地になっていた。

斜向かいのKさんの旅館は、この小さな町の、たった一軒の旅館として、細々と経営を続けていたようだ。

開け放たれた玄関の前を通り過ぎようとした時、全身の鳥肌が総立ちになり、思わず立ちすくんだ。

あの掛け軸が、掛けられている。

旅館の玄関の壁に、悪い夢であったと思いたかった掛け軸が。

醜怪な幽霊が、掛け軸の中で笑っていた。

恐らく、火事を眺めていたKさんも、こんな顔になっていたのだろう。

これだけでも、なかなか嫌な話であるが、もう一つ、嫌な話がある。

私は、幽霊が描かれてある掛け軸のことを地元の知人や親戚に、何かと聞いていたのだが、誰1人として、そういえば、と言ったものはいなかった。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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