ヒラヒラの話

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昔の田舎には色々とヤバいモノがいたんだよ!

【怖い話】ヒラヒラの話

ヒラヒラの話

「ひらひらの話」

オノマトペで失礼。

だが、あれは、そう表現する以外にない。

あれは、私が小学3年生の時、ど田舎小学校からの帰宅途中であった。

見渡す限りの田んぼ、田んぼ、また田んぼ。

その向こうには、山。

のどか過ぎて、思い出すだに死にそうだ。

私は、ばあさんになっても、田舎には引っ越したくない。

その理由の一つに、不便だというだけではなく、奇妙な体験ばかりしていた、というものがある。

例えば、お化けなら、なくなった人間の魂であり、そのの殆どは、人の姿をしているものであるが。

たまに、全く訳のわからない現象を目撃した。

青く澄んだ晴れ渡る空。

まだまだ、物の怪アワーには程遠いはず。

私は、妙な音に気がついた。

シュウゥ~ン……

シュウゥ~ン……

シュウゥ~ン……

なんの様なとか、形容しがたいとしか言いようのない音だ。

シュウゥ~ン……

シュウゥ~ン……

私は、立ち止まって、キョロキョロと辺りを見回した。

いつもと変わりない田んぼと山。

あれ……?

私から、約10mほど離れていただろうか。

田んぼの上で、何かが……。

何だろう?

それは、まっ白くて、細長い。

ひらひら……

ひらひら……

ひらひら……

うねり、回転し、宙を泳ぐように飛んでいる。

薄地の布のように思えたので、どこかから飛んできたのかな、と思いもしたが、稲穂をピクリとも揺らさない無風状態で、いつまでも、いつまでも、布が宙を飛ぶことなどできようもないだろう。

ひらひら……

ひらひら……

シュウゥ~ン……

シュウゥ~ン……

ああ、この音だったのか。

あの不思議な音は、どうやら、この真っ白い何かが出していたらしい。

さかんに身をくねらせ、宙にいる。

私は、ランドセルのベルトを握りしめたまま、その様を見ていたが、次第に、その何かが、とても楽しそうに遊んでいるように思えてきた。

シュウゥ~ン……

シュウゥ~ン……

頭がぼんやりとしていたと思う。

はっと気がつくと、白い何かは、私まで、あと2m辺りまで来ていたのだ。

「わっ!!」

私は、驚いて後ろに退いた。

シュウゥ~ン……

シュウゥ~ン……

奇妙な音は、耳障りなほど大きくなった。

シュウゥ~ン……

パサリッ、パサリッ……

真っ白い何かは、強い風にはためくような音も立てている。

シュウゥ~ン……パサリッ、パサリッ……

旗のお化け!!

私は、恐怖に蹴飛ばされたように、その場からすっ飛んで逃げた。

一心不乱に後ろを振り返る勇気なんてまるでないまま、
家まで突っ走った。

玄関から飛び込むようにして入り、ドタンっと転んだ。

体のあちこちが痛む。

息が上がって心臓が狂ったように鼓動した。

「何しよんかね!」

母親が、困惑の表情で玄関先に仰向けに投げ出されたかのようになっていた私を見た。

変なのがいた、と言葉にできない。

セェセェ、ヒューヒューと息が笛のように鳴った。

私は、そのまま、2日間ほど寝込んだ。

高い熱が出て、喉が腫れ上がった。

医者は、風邪だろうと言った。

だが、母親は、熱で力なく呻いている私を背中に背負い、
神社の宮司さんの所へと連れて行った。

私は、頭が朦朧となり、息が苦しくて、始終喉を触っていた記憶がある。

冷たい板間の上に寝かされると、熱のせいか、ひんやりと冷たい床が心地良かった。

時折、瞼を薄く開くと、年季の入った古い天井が見えた。

どこなんだろ、ここ。

すると、頭の方から誰かが来た。

シュッ、シュッ、シュッ

衣擦れの音がする。

宮司さんの紫色の袴の裾が見えた。

これから先は、実のところ、私の記憶が定かではない。

ひどい夢を見たのかもしれないし、実際、現実にあったことなのかもしれない。

恐ろしい、不気味な内容であったとしても、夢であったとしたら、それは夢に過ぎない。

実話怪談として、語ってよいものか。

今だに、寝汗をかいてしまう悪夢となって、甦ることがある。

夢であったのか否かは、どうにも明白ではない。

夢の内容として聞いていただけるとすれば、
白い布か紙のようなもので顔全体を覆っている宮司さんが、私の頭の上あたりで跪き、人差し指と親指を何か水のようなもので濡らして、私の口の中にグウゥ~ッと突っ込んで来るのだ。

驚くいとまもなく、宮司さんの指は、グングンと喉を過ぎ、その奥までググウゥ~ッと入って来た。

息が出来ない……!

指がグリグリと喉の下あたりで動いているのがわかった。

気持ちが悪い、吐きそうだ。

「おった!」

宮司さんの声が、顔を覆った白いものの下から聞こえた。

半端なく苦しい、その上ゴブッ、ゴブッと喉が勝手に動く。

背中が反り上がり、半身を起こそうとしたが、宮司さんは、私の口の中に指を突っ込んだまま、ものすごい力で、押さえつけた。

そして。

「よぅしっ!!」

宮司さんは、私の口の中からズルズルズルッと何かを引っ張り出した。

「ぐぶっ!!」

私は、仰け反って悶絶した。
ズルズルズルッと、何かが喉の奥から引っ張り出される。

「よしゃっ!!」

ビシャリッ、と真っ白の濡れた長いものが床に叩きつけられた。

私は、ぐったりとなって、ようやく出来た息を懸命に始めた。

「こらぁ、大ごとやったなぁ、よう我慢した」

宮司さんの声がしたが、私の気力と体力は、ゲージがゼロであった。

気を失ったらしい。

眼が覚めると、嗅いだ事のない匂いがする布団に寝かされていた。

襖が開いている隣の座敷で、母親と宮司さんが何か話しているのが見えた。

私が半身を起こすと、宮司さんがにこやかに言った。

「もう、いいかね、起きれるか?」

私は、声を出そうとしたが、喉に激痛が走ってダメだった。

「無理はせんでええ、まだ、声は出らんやろう」

何が起こったのか、全くわからない。

すべてが悪い夢だったような気がした。

私は、刺すような喉の痛みの理由をわからないまま、母親に何を聞いていいかもわからないでいた。

母親に背負われて家に帰り、白湯に近い重湯を飲まされた。

全く味はしなかったが、わずかに力が湧いたような気がした。

その日は、そのまま翌日まで眠った。

夢も見ずに手……。

実は……。

私は、そのまま、その出来事を忘れていた。

忘れていた、というよりも、思い出したくなかった。

しばらくの間、本気で思い出そうとすれば、思い出せていたかもしれないのに、あえて思い出そうとしなかった。

真っ白い、ひらひらと宙を泳いでいるような奇妙な何か。

そして、宮司さんが、私の喉から引き摺り出した何か。

あの当時、時折、宮司さんが、母親に、感心したように言う事があった。

「我慢強い子でよかったばい」

しかし、母親はニコリともせずに答えた。

「こんぐらいで泣き言いよったら承知せんですけ」

こんぐらいって、私は死にかけていたと思うのだが。

まあ、現実にあったことかは、定かではないが。

恐らく、あの真っ白いヒラヒラは、私の体内に入り込んでいたのだろう。

それを悟った母親が、私を神社に連れて行き、宮司さんに、体内から引き摺り出してもらったようだ。

ただ、どうにも、現実感がなく、あれは悪い夢であったのではなかろうか、とつい思ってしまうのだ。

私は、15歳になって、ようやく、母親に聞いた。

「ねぇ、私さ、なんたが、小さい頃、変な目にあったような気がするんだけどさ。
なんか、ひらひらしたもんが、私の中に入ったとか、なかった?」

母親は、一瞬顔を強張らせたが、すぐに普通の表情になった。

「知らんよ、夢でも見たんやないんね」

そうか、そうなんだ。

だが、私は、見たことがあった。

あの真っ白いヒラヒラした何かから、完全に逃れるためには、ヒラヒラの一部を引き破り、憑り依かれた者の親が持っていなくてはならない。

母親は、小さな木箱に、黄ばんだ薄い小さな布切れのようなものを入れて、後生大事に取っていた。

私は、東京で成人式を迎えたのだが、夢の中で、母親が小さな古い木箱を神社の庭内で焚き火の中に投げ込んでいるのを見た。

ああ、ようやく、夢が終わった……と思った。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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