犬鳴峠 忌まれた場所 其の三 『匂い』

スポンサーリンク
Youtube

今日は犬鳴峠に行っちゃったUちゃんの彼氏のお話なんだけれど・・・。

犬鳴峠 忌まれた場所 其の三 『匂い』

「忌まれた場所・その3・臭い」

犬鳴峠が、心霊スポットとなってから、久しい。

いつの間にか、日本有数の、とまで言われている。

私は福岡を起点に占い師を30年以上生業としている。

その手の話はお客様から聞く機会が多い。

都市伝説とはいえ、まあ何かあるのであろう、というような体験もした。

いやいや、私自身は現地に行こうとは思わない。

わざわざ、招かれざる客を七割以上の確率で、連れて帰ってしまう場所に行く事なんか御免被る。

だが、若さは馬鹿さ……。

若さにまかせて、とりあえず行くらしい。

酔いの勢い、退屈凌ぎ、お仕事(YouTuberさんたち)な……。

別に心霊スポットでなくとも夜は怖かろうという山の中へ、いそいそと出かけていくのだ。

1人で行こう、というような、呆れた横道もんは、滅多にいないが、たまに、威勢を張りたがる者もいる。

「先生ー! どうしょー!」

いつも、ことが起こった後に駆け込んで来るお客さんがいる。

どこか天然が入った女子大生のUちゃんの彼氏は、4歳年下のハイ・スクール・ボーイであった。

Uちゃんが、どうしょーと来る時は、大抵時既に遅しなのだ。

私は占い師の看板を上げているのだが、人伝に聞いて事が起こって駆け込んでくる。

あの日は、土曜日の夕暮れであった。

夕焼けの鮮やかなオレンジ色の光をよく覚えている。

そんな中。Uちゃんは、私にぽ~っとした感じで助けを求めて来た。

「おお、Uちゃん、何か仕出かしたのか?」

Uちゃんは、珍しく本当に困った顔をしていた。

「どうしょ~、先生~!」

「ほいほい、だから、何を?」

Uちゃんの年下彼氏は、かなりのゴンタクレである。

高校も登校したり、休んだりの繰り返し。

周りをハラハラ、イライラさせるのが趣味か? という16歳だった。

「先生~、勝太が、犬鳴き行くって言うと~!」

出た……。

バイクか車が好きで、暇と勢いを持て余しているような若造は、当たり前のように、目指す場所。

犬鳴き峠。

旧称、久原越は、福岡県宮若市と同県糟屋郡久山町との境を跨いで存在している峠だ。

そこは、私の学生の頃から、散々忌まわしい噂が飛び交っていた。

確かに、人里離れた裏寂しいど田舎であるからして、何かと事件が起こったのも頷ける。

「まあ、止めただろうけど、無駄だったんだね」

「さすが~、先生~、ようわかっとぉ~」

占い師でなくとも分かることだ。

流石でもなんでもない。

「で、いつ行くって?」

「もう、行った~」

ああ、そう、そうか。

言ってくるなら、お馬鹿さんが行く前にして欲しかった。

とはいえ、そうだとしても、どうするというのだ……。

「まあ、仕方ないね、携帯、通じるよね、LINEとか」

「うん、毎日、LINEしとると~」

別に、そんなことはいい。

「出てから、どれくらい経った?」

「1時間くらい~かな?」

私に聞いてもわからないよ。

「そうだね、まだ、走ってる最中だな」

やんちゃ坊主のやることは、わかっている。

現地に着いたら『いま、俺、ここ! フォ~ッ!』とか書かれた写真をUpするに違いない。

「あと一時間くらいしたら、LINEしてみなさい」

「は~い」

Uちゃんは、帰り際に、ふと振り返った。

その時のUちゃんの表情は、天然気のない、至って真面目な面持ちであった。

「どうした?」

すると、Uちゃんは、静かな口調で言ったのだ。

「先生、私……もう、勝太に会えない気がするんだけど、気のせいだよね」

え?

私は、ドキッとした。

Uちゃんは、まるでお告げの巫女か何かのように、妙に神秘的な女性らしさに輝いていたからだ。

こんなUちゃんを見たことがない。

「どうして、そう思う?」

私が聞き返すと、コロッといつものUちゃんに戻った。

「そんな気がしただけやん! フフフなんか、ちがうよね」

私は、猛烈に嫌な予感がしてきていた。

Uちゃんが帰った後も、どうも落ち着かない。

犬鳴峠、ただのど田舎ではないか。

人が殺される事件など、どこででもあると言うのに、どうしてあの場所は、ここまで人を引き寄せているのだろうか?

それから暫らく、Uちゃんは、顔を見せなかった。

心配ではあったが、連絡がないのは、別に何事もなかったと言うことでもあろう、と思おうとしていた。

「先生~!」

3ヶ月半ぶりに、Uちゃんは、現れた。

いつもの天然は変わりなく、どこか間延びした喋り方もそのままに。

ただ。

うっ……。

薄桃色のワンピースに、猫の顔のバッグ、テラッテラした模造パールのネックレス、ああ、Uちゃんだ、まごうことなく彼女である。

しかし、吐き気がこみ上げてくるような、凄まじい臭いがする。

「先生~、久しぶり~!」

Uちゃんが小走りで近寄って来たが、胸がへしゃげてしまいそうな悪臭が、鼻腔の細胞を根絶やしにしそうだった。

なんの臭いだろう、嗅いだこともないような、凄まじい臭いだ。

Uちゃんが、私の前に立った時、その臭いがなんなのか、わかった。

Uちゃんの両肩を赤黒く焦げた脂が張り付いた細い指の手が、背後から掴んでいる。

そうか、焼けた肉の臭いだ。

燃焼促進剤のきつい化学臭が混じった人間の肉が焼ける臭いだ。

「あのね、これ、見せに来た」

Uちゃんは、猫の顔のバッグの中から、スマホを取り出した。

そして、いきなり、大粒の涙をぽろっと流した。

「どうした、Uちゃん!」

Uちゃんの勘は当たっていた。

あの日、ヤンチャでゴンタクレの彼氏は、帰って来なかったのだ。

「ほら、これが最後」

私に言われた通りに、一時間後にラインを送った時は、3台のバイクをコンクリートで塞がれた旧トンネルの前で止めて、サム・アップの自撮りが送り返されて来た。

到着後に送られて来た写真には、赤々と燃える大きな焚き火を背に、下手な格好をつけた写真。

メッセージが付けられていた。

『今から、合同慰霊祭を行いま〜す! 炎とともに霊を除霊するのだ!』

馬から落ちて落馬したメッセージであった。

しかし。この後、連絡は途切れた。

Uちゃんが、何10回とラインを送ったが、返事がない。

家に行っても、帰ってないよ、どうせ何処かで遊び呆けとるんやろう、と言われたそうだ。

当たらずしも遠からずな日常を送っていたゴンタクレである。

Uちゃんも、不安ながら、そうかもしれない、と思っていたのだが。

1週間後、旧トンネルの前に停められたままのバイクが3台。

そして、そこから1kほど離れた場所で、全身3体の焼死体が発見された。

事件性はあるが、威勢の良い若者たちを一体、如何なる理由で……。

また、如何なる方法で、骨と骨にこびり付く焼け焦げた肉だけにしてしまえたのか。

謎のままであるらしい。

Uちゃんは、ぽろぽろと涙を流し続けていた。

だが、それどころではない。

Uちゃんには、愚行のツケを支払わされたとした彼氏の勝太がくっついている。

そして、おかしなことがもう1つ。

後日聞いた話なのだが、遺体の身元確認のために呼ばれ御両親の方々は悲しみの中困惑したそうだ。

我が御子息の確認よりも焼けて激しく損傷している遺体に、嗅ぎ慣れない化学物質のような匂いに咽たという。

しかし、検視の結果は、彼らを燃やし尽くした炎には、そんな化学物質は含まれていなかったと言う。

まぁ、様々な因縁がある忌まれた場所なのだろう……。

ゴンタクレ達がそんな姿に成り果てる前に、燃やされた地縛霊と同じように、その場に縛り付けられてしまうのだろう。

いや、少なからず、Uちゃんは、大好きな勝太君の手と足となり、あの忌まれた場所に地縛されないようにしているのだ。

稀にこんな体質というか、無意識な能力というか、そんな力を持っている子もいる。

昔話ならば、菩薩や観音に例えられる力なのだろうが、時代も違うし本人の自覚も無いのだろう。

ゴンタクレの勝太君は、忌まれた場所に縛り付けられ不浄な霊と混じり合う事は免れたようだ。

それが、Uちゃんの意思であろうとなかろうと……。

バカ勝太。Uちゃんに影響が出る前に、とっとと成仏しろ!

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

コメント

タイトルとURLをコピーしました