犬鳴峠 忌まれた場所 其の二 消えた幼馴染

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今日も犬鳴峠シリーズだよー!!

犬鳴峠 忌まれた場所 其の二 消えた幼馴染 【怖い話】

犬鳴峠 忌まれた場所 其の二 消えた幼馴染

私と付き合いの長いお客さんのA子さんから聞いた話だ。

彼女は、幼馴染の男性がいて、仮にEさんとしよう。

彼は、筑豊の地方出身者であったらしいが田舎住まいのなので、なかなか良縁に恵まれていなかったらしい。

そんなEさんとしばらく会えていなかったのだが、久しぶりに連絡が来たと思えば。

「俺、かのじょができたばい!」

A子さんは、うれしそうなEさんの声に、驚きながらも安心したと言う。

長いこと色恋沙汰がなかった幼馴染が、恋話をして来たのだ。

A子さんは自分の事はさて置いて、本当に祝福したい気持ちになった。 

「よかったねぇ」

このまま結婚まで行くといいなぁ、と喜んで半年余り経った。

突然、Eさんの母親から連絡が来た。

「え?!」

A子さんは、呆気にとられた。

何と、Eさんは、一ヶ月前から行方不明だと言う。

何か事件に巻き込まれてしまったのか?

恋人ができたと、あんなに喜んでいたのに……。

あんなに幸せそうだったのに、と悲しみと不安が湧いてきた。

「何の連絡もないんですか! 警察とかに行かれました?!」

電話の向こうの声は、当たり前のように重く暗かった。

Eさんの母親は、奇妙な答えをくれたらしい。

「警察には言えんですけ」

「はい?! そんな、行方不明ですよね!」

A子さんは、激しいモヤモヤ感に襲われたと言う。

「何があったんですか!」

しばしの沈黙の後、Eさんの母親から全く信じられない事情を聞いた。

「私たちが、結婚を反対したせいですけ」

「へ?! 反対なさってたんですか!」

あんなに幸せそうだったのに、とA子さんは、やや怒りを覚えたと言う。

だが、この後、謎はさらに深まってしまう。

「あん人は・・・、あん人は、ですね。生まれがようないから」

あぁ……そうか……本当に嫌なものだ。

田舎では生まれた地域や血筋など、独特の差別も当時は根強く残っていた。

良い悪いではなく、そういう時代だったのだ。 

A子さんは、憤懣やるかたない思いに駆られる。

「そんな! Eさんものすごく嬉しそうでしたよ。そんな生まれがどうのこうのって!」

A子さんは、怒気を抑えてEさんの母親を責めてしまったそうだ。

電話の向こうから、強く押さえ込んだ悲しみと啜り泣く声が聞こえてくる。

その声は、いまだにA子さんの耳の中に澱を残しているらしい。

「あん人は……いんなきの生まれですけ」

「い?! は?! それ、どこなんですか?!」

A子さんは、『いんなき』などと言う地名に聞き覚えはなかった。

「いんなきって、どこかの地名ですか? 」

A子さんが聞くと、電話を切られてしまった。

「あの時、私。何だか、ムキになってたと思います」

A子さんは、複雑な面持ちで言った。

「それで私、どうしても納得いかなくって。Eさんのお兄さんに会いに行ったんです」

気になって仕方がないし、心配でいても立ってもいられなくなったA子さんは、Eさんのお兄さんに会いに行った。

電話でアポを取った時、何となく何か渋っているような感じがしたが、どうしても話がしたい! と押しまくったた結果。

会いましょう、と言うことになったらしい。

「会ったのはいいんですが、何だか、変なことばかりで……」

「変なこと?」

A子さんは、Eさんのお兄さんと久しぶりに会ったのだが、どこか諦めているような、言いようのない雰囲気を感じたと言う。

A子さんは、お兄さんと喫茶店に入り、Eさんが電話でどんなに幸せそうだったかを伝えた。

しかし、Eさんのお兄さんは、深いため息を何度も吐いては、腕を組んだり、首を傾げたりと落ち着かない。

「母ちゃんから、なんか聞いとる?」

「うん、あん人は、生まれが悪いって」

「う~ん、まあ、ね」

Eさんのお兄さんは、頭をガリガリと掻いたり、顔をゴシゴシと手のひらで拭ったりし続けている。

A子さんは、のらりくらりと言い渋る態度に、かなりイライラしてきたと言う。

「何隠しとるん!  何があったん!」

他の喫茶店の客が振り向くような大声を出してしまった。

「うん、母ちゃんと父ちゃんが調べたんよ、いろいろ」

「Eさんのカノジョのこと?」

「うん、ああ、うん」

まあ、結婚相手のことを知りたいのはわかる。

ましてや、古い習慣が残る田舎であるのだ。

相手の家柄や生まれが気になるのは、時代的に仕方がないものだった。

「それがちゃ、困ったんは」

A子さんは、ため息を連発するEさんのお兄さんに言った。

「ねぇ、いんなきってどこやん?」

Eさんのお兄さんは、一瞬で顔色が悪くなった。

「おばさんが、いんなきの生まれってゆうとったんよ」

Eさんは、なぜか、辺りを見回し、小声になった。

「大声出さんで、そうよ、あいつのカノジョ、いんなきの生まれやったけ」

「だから、いんなきってどこやん!」

Eさんのお兄さんは、ぽかんと口を開けたかと思うと、ふうっと重たく息を吐いた。

「いんなきちゆうたら、畜生しかおらんとこやけ」

A子さんは、ひどい言い草にムッとした。

そして、Eさんのお兄さんから到底信じられないようなことを聞かされた。

「いんなきちゆうたら、むかしからハズレんなったもんが行くとこち。ハズレもんどうしで畜生んごと、暮らしとるち、言われとるけ」

「何、それ・・・! バカみたい!」

A子さんは、子供じみた気色の悪い話に、殊更に怒りを感じたが、Eさんのお兄さんは、青ざめるほど真剣であったらしい。

「見たことがあるちゆうとるもんもおるけ。伐採に行って迷ったもんが、おうたち……」

ポツリ、ポツリと小声で話始めた内容はこんな話だった。

山に電柱を建てる為に、雑木林の伐採に入った職員が迷ってしまった。

道を見失って、ウロウロとしていると、木造でボロボロな廃屋が7~8軒ほど残された集落のような場所に出たらしい。

外見からして長いこと放逐されていた廃屋だというのに、妙に誰かがまだ住んでいるような気配がして、ひどく気味が悪い。

どこかに誰かいないかと、一軒一軒、見て回ったが、家の中は時が止まっていたかのように、数十年前の物があちこちにあったそうだ。

レコード、絵表紙の雑誌、日めくり……。

湿気た新聞紙の日付を見たら、昭和7年の発刊でえらく古いものだった。

だんだんと暮れてきて、薄暗くなってくる。

その職員は、矢も盾もたまらず、一刻も早くこの集落から離れたいと走り去ろうとした。

すると、異様な姿の男たちが、何処からともなく現れ、大声で叫びながら追いかけてくる。

その男たちは、何かを叫んでいるが、言葉がわからない。

明らかに日本語ではない。怒気を含んだ叫び声を上げながら追いかけて来た。

職員は、生きた心地が失せたと言う。

暮れ行く山中を職員は全力で疾走。道なき斜面を無我夢中で転がるように走ったそうだ。

そのおかげか、不気味な追っ手から逃れられたそうだ。

日も暮れて、帰社時間をとうに過ぎているのに職員が帰社しない。との通報を受けた警察と捜索隊に運良く発見される。

そこは、電柱を建てるはずの視察予定地から遠く離れた場所だった。

職員は発見時。足を骨折し、なぜか下着しか身につけていない状態で、体のあちこちに赤黒い何かが付着していたと言う。

それは血と泥のついた手で撫でまわされたかの様だったという。

職員が発見された場所と周辺の捜索の結果、高台から枯れた沢に転げ落ちたらしいという事は判ったが、その高台に通じる山道は無く、どうやってそんな所に行ったのかは全く分からなかったそうだ。

また、職員は高台か落下した後の記憶はなく、もう自分は殺されてしまう。と思ったと言う。

A子さんは、呆れたらしい。

「なん、それ、子供やないんやから、変な話せんで!」

「変な話やないち。そいつら、いんなきのもんやけ」

Eさんのお兄さんは、農事試験場の勤務だが、よく山の中に植物などの採集に行っていたことがあると言う。

しかし、両親から執拗に、あの辺りには行くな、絶対に行くな。と言われ続けていたらしい。

「いんなきのもんは、人さらいもするち、女子供ばっかしやないち。男も拐うち。気をつけな!」

Eさんのお兄さんも、当初は、そんなバカな。と笑っていたらしい。

しかし、役場の人間や警察関連の人間たちからも、その話題がでると、いきなり言葉を濁したり、黙り込んでしまわれたりする経験が何度か繰り返される。

もしかして……。何かあるのかもしれない。と思い始めてしまったと言う。

そこへ持ってきて、弟のカノジョの身元の調査を両親から頼まれた。

ありがちな話だと思い、ああ、いいよ、と調べているうちに、奇妙なことが発覚した。

「カノジョは、あの辺りの出身で、父親と母親は行方不明ちなっとった。里子に出されたらしいけ、その里親んとこに行って話ば聞いて来たんやけど」

A子さんは、信じられないような話を真摯に聞こうとしているのだが、その時は何故か頭の中に霧が張ったように考えがまとまらなかったそうだ。

しかし、Eさんのお兄さんの話は続く。

「カノジョが13歳かそこいらから、夕方になると山に入るようになったち」

「そんな、危ないやん」

「うん、でも、怒っても、怒っても、1人で山に入ってしもうて、下手すると朝方に帰って来よったち。里親としては、悪い噂になるって、娘やから、ようないち、さんざん諭したらしい」

そして、里親は里子を軟禁状態にしてしまったらしいが、時すでに遅し。

「そのこ、妊娠しとったち」

「はぁ?!」

齡十四歳の里子は、妊娠していたという。

里親は、絶望に見舞われながらもこのままではいけない、と強制的に産婦人科へ連れて行ったそうだ。

誰が相手なのかと、施設の職員やらで、厳しく問い質して、ようやく答えた言葉が。

「父ちゃんが、山で待っとる」

周囲の人間は、里子の父親のことなのか、それとも、お腹の子供の父親のことなのか、わからなかった。

「父ちゃんが、帰って来いって、言いよる」

里親は、施設の職員に里子の両親は、行方不明のまま死んだことになっている。と聞いていたらしい。

里親は、あおざめたと言う。

その後、里子は、施設に戻された。

面倒を見きれないし、死んだはずの人間に会いに行っている。帰って来いと言われているなど、気味が悪いことこの上ない。

そして、隠された大きな理由。

 『この娘は、いんなきのもんやなかろうか』

関わり合いになり続けることを忌み嫌われる場所の出ではなか。

このまま養女として面倒を見るという事は、それに関わると言う事なのだろうか。

「また・・・、いんなき?!」

A子さんは、嫌悪感と恐怖で居た堪れなくなったという。

Eさんのお兄さんは、肩を竦めて頭を抱えた。

「俺もよう知らんけど、あの辺りじゃ、知らんもんはおらんち」

「でも、信じられると! こんな話、信じられるとね!」

A子さんは、鳥肌を止められないまま、押し寄せてくる不気味さに対抗したらしい。

「だから、俺も信じられんていよろう、でも……」

「でも、なん」

Eさんのお兄さんは、目頭を押さえて言った。

「あいつは、もう、帰ってこんと思う」

A子さんは、この話をどこに、誰に話していいものか、わからなかったという。

とりあえず、占い師の私に頼めば何かが見えるかも。と思ったそうだ。

シャッフルするカードがベッタリと重い。

タロットカードを展開する前から芳しくない展開が目に見えるようだ。

そして、この話を始めた頃から遠くで叫び声が聞こえてきている。

その声は怒気を含んでいる事は解るのだが、何を叫んでいるのか解らない。

数人の男の声が頭の中に響く叫びく。それは明らかに日本語ではないようだ……。

さぁ、カードが展開し終わった。占いを始めよう……。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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