犬鳴峠 忌まれた場所 其の四 ナビゲーション

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今日は犬鳴峠シリーズだよー!!科学の使途!! お医者さんの卵が体験した怖いお話だよー!!

犬鳴峠 忌まれた場所 其の四 『ナビゲーションシステム』

犬鳴峠 忌まれた場所 其の四 ナビゲーション

あの心霊スポットにまつわる話。

これは、若造でも子供でもない。良い年をした大人から聞いた話。

暇潰しや、酔いのついでに繰り出すような愚かさはない。
 
心臓外科医であるY氏は、貧乏インターンの頃、宅配のバイトをたまにこなしていたと言う。

「医者のバイトにしちゃ、ちょっとねぇ」

ご本人も、苦笑しつつ、ある昔話をしてくれた。

「あれねぇ、あれ。俺がさ、宅配のバイトしてた時のことなんだけどね」

Y氏は、論文に必須の参考書の価格が高過ぎて、ぐうの音も出ない事態となり、3日間の限定で、バイク便のバイトを請け負ったらしい。

大体が、バイク好きである。

病院の徹夜で安バイト料よりも、バイクを走らせてそこそこバイト料を選んだわけだ。

頃は、11月半ば。

バイク便も、バイト人員を大幅に増やせるほど豊かではなく、たまたま入ってきたY氏に、怒涛のような仕事が回ってくる。

配達物を届けに行く時とトイレ以外。ほぼ1日中、バイクのシートから、お尻を離せなかったと言う。

そんな激務が続く中、やれ、後1日かと思いつつ、その日の仕事を終えようとした時だった。

「お~い、おい。頼むよ、これ。最後! な、これっ! 頼むよ」

すでに疲労していたY氏は、露骨に嫌な顔をしたらしいが、小遣いを付けるよ。と言われたので、まあ、いっか。と配達先の住所をもらってナビに打ち込んだ。

「若かったよねぇ、今だともれなく倒れてるよ~、あはは」

さて、配達先である宮若市であるが、Y氏は、行ったことがなかったのでナビで検索してみた。

「社長、ここって、山ん中ですよぉ! 狸か狐が受取人ですかっ!」

バイクですっ飛ばしても行きに2時間はかかりそうな地域だ。

「社長、小遣い、足して~っ!」

Y氏の大声に、社長は、なぜか素直に了承した。

ふぅん……。

いつもなら、ケチるのに、と、不思議に思ったと言う。

まあ、距離が長いってことはわかってるからかな。と思いつつ、バイクに跨った。

暮れなずんで来ていた町から、配達先へ向かって出発した。

ヘルメットの中には、お気に入りの曲が響いている。

気がつけば、辺りは真っ暗で、幅広い山中の道路の上であった。

対向車が不思議と無く、景気良くすっ飛ばせた。

疾走するバイクとの一体感が心地よかったと言う。

視界にはヘッドライトが照らすアスファルトだけが写り、お気に入りの曲と相まって、心地よい催眠状態というか、幽玄というか……。

それは、一日中バイクにまたがっていた疲労感からくる眠気ではない。

このまま別の世界まで辿り着いてしまっても、おかしくないな。などと変なことを考えてしまう不思議な非日常を感じていた。

「しかし、ほんと、なんっもないとこだよなぁ」

Y氏はヘルメットの中で独り言を呟き、意識をはっきりさせる。

バイクに装着されたナビは、黙々と行先に向かって青いラインを延ばしていく。

人里離れた山中に、ひっそりと住み着きたがる人もいる。

とりあえずナビに従って、間違えようのない道路を突っ走った。

『到着まで、残り230メートル、です』

ヘルメットの中に響くご機嫌な曲に、ナビの合成音が割って入る。

お、もうすぐだな。と思いながらも、よくもまぁ、こんな所に人が住んでるもんだ、と呆れた。

『間も無くです、残り17メートル』

「はぁ?!」

Y氏は、思わず声を上げてしまったと言う。

見渡す限り、道路と山。

街灯が並んでいるだけで、人が住んでいそうな気配はない。

バイクを停めて、腰を伸ばし。辺りを見回した。

「なんだ……、こりゃ」

目の前には、真新しいトンネルが大きく口を開けている。

天井付近に設置されたオレンジ色の照明がラインのように続いているが、その灯りは心もとなく、トンネルの隅までは届いていない。

『残り、10メートル、です』

Y氏は、ナビの声にビクッとしてしまった。

「さっき、到着って言っただろっ!」

心細さも手伝って、つい、ナビに向かって怒鳴ってしまった。

『到着まで 残り 10メートル』

「どこなんだよ、もう!」

Y氏は、ナビをのバイクを止める。

ヘルメットを脱いでナビゲーションの詳細を確認するためにヘルメットを脱いだ。

冷たい夜気が急速に体温を奪っていく。

「落ち着け、俺、落ち着け」

夜空を見上げて、独り言を言った時だった。

『ここではありません、旧道に行ってください』

「はぁ!?」

Y氏は、長いこと、ナビゲーション・システムを利用していたが、こんなセリフは聞いたことがなかった。

『旧道に来てください。ここではありません。旧トンネルの前に来てください』

ナビが、自分に向かって命じているように聞こえたと言う。

『ここではありません 旧トンネルの前に来てください』

Y氏は、全身に冷たい汗をかいた。

「ここ・・・、あれ・・・?!」

自分がいる場所がどこなのか脳が認識する前に、バイクに跨り、猛スピードでその場から走り出した。

心臓は、ドクドクと早打ちし、冬だと言うのにツナギの中は粘るような冷たい汗でじっとりと不快だ。

『届けてください 旧トンネルの前に来てください』

『届けてください』

『届けてください……』

もう、たまらなくなり、ブレーキをかける。

「ぅわぁ~っっ!!」

Y氏は、スピーカーが付いているヘルメットを脱ぎ捨てて再発進。

とにかくバイクを猛スピードで走らせた。

何処をどう走ったかは覚えていない。

ただ、無我夢中で走っている最中。

耳鳴りのように『届けてください 旧トンネルの前に来てください』とナビの合成音が聞こえてくるようだったと言う。

聞こえないはずだ。無視しろ。これは記憶が聞かせている耳鳴りのようなものに違いない。

流石は医者の卵。自分を納得させるにもオカルト知識は使わない。

しかし、怖いものは怖い。

血の通ってない機会音声が、あれほど不気味に聞こえたことはなかったそうた。

ノーヘルで山から街まで疾走したY氏は夜中と言え、運よく白バイの目には止まらなかったようだ。

集積ステーションに帰り着いたと言うか、事務所のドアに衝突しかねない勢いで、突っ込んだ。

「はぁ……はぁ……」

まるで、自分の足で走ってきたかのような疲労感がのしかかって来たという。

事務所の中から、渋い顔をした社長が白い封筒を持って出て来た。

「はい、ご苦労さん」

「え……?!」

思えば、荷物を届けていない。

それなのに、社長は小遣い付きのバイト料をくれた。

「あ、あの!」

「いや、いい、いいんだ。とにかく、お疲れさん」

社長は、Y氏の話を聞きたくない、とでもいうように、早々にその場から去ってしまう。

いゃ、社長は知っている。はめられた? 何に?

何処に向けていいのかわからない怒りが込み上げようとするのだが、冷たく粘りつく汗で全身が氷のように痛く冷たい。

その時Y氏は、怒っても良いんだよな? と思いながらも全く怒りが湧いてこなかったそうだ。

しかし、どうも納得が行かない。

深夜の事務所は白々とした蛍光灯の光に照らされている。

壁向こうの集積所では、バタバタと荷物の仕分けをしている作業員の音が聞こえる。

近くに人のいる安心感がここにはあった。

とにかく落ち着こう、と事務所の椅子に座り、暫らくしたころ。長くそこの宅配業に勤めてるい先輩が事務所に入ってくる。

「お疲れさん。おぅ、どうした。今日はいつになく疲れてるね。頑張り屋さんは何件運んだ」

Y氏は事の次第を全てを先輩に話した。

先輩は最後まで黙って話を聞き。ああ、ああ、と頷かれたという。

「あるんだよねぇ、一年に何回かさ。お前が行ったとこと同んなじとこに届けてくれって。
だから、お前だけじゃないよ、恐ろしい目にあった奴って」

Y氏は、呆れた。

怖い目にあったのは、俺だけじゃないから大丈夫だと?

大丈夫なわけないじゃないか!

「わかってて、なんで行くんですか!」

先輩は、ため息をついて肩を竦めた。

「うん、無視したことがあるらしいんだけどさ……」

「当たり前ですよ!」

「でもなぁ、まあ、それのせいかどうかはわかんねぇけど、変な事故が続いてさぁ。
ナビゲーションが、おかしくなっちまうんだよ。デタラメ言って、人死出すとこだったんだぜ」

「ナビが出鱈目って……」

Y氏の耳に件のナビの声が蘇る。

『ここではありません 旧トンネルの前に来てください』

来てくださいって、行ったらどうなるか分かんねぇじゃん。

寒いを通り越して体が冷たい。帰って湯船に漬かりたい。

「あぁ、そうそう。おまえ、あの高っかそうなヘルメット何処に捨ててきたんだ。夜が明けたら一緒に拾いに行ってやるぜ」

あぁ、あのヘッドフォン付きヘルメット。音に拘ったヘルメット。高かったなぁ……。

心優しき先輩の気遣いに感謝しつつも、峠には近づきたくない。

「よく、覚えていません。もういいです。ヘルメットは諦めます」

Y氏は、あと1日を残して、配達のバイトを辞めたという。

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