犬鳴峠 忌まれた場所 其の一

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今日で百話に到達です! 皆さんありがとう!!
今日から百話記念で「犬鳴峠」シリーズの始まりだよー!!

【怖い話】犬鳴峠 -忌まれた場所-其の一

犬鳴峠 忌まれた場所 其の一

私の父親は、九州電力の社員だった。

転勤が多く、僻地に点在する事務所回りばかりで引越しの連続。我ながら落ち着きのない学生時代を過ごしていたものだ。

田舎の閉鎖的なコミュニティーには、ちょっと現代では予想不可能な慣習や言い伝え、慣わしがあったりする。

閉鎖的で娯楽の少ない田舎暮らしでは、何か事件が起こっても新聞に載るわけでもなし、テレビで報道されるわけでもない。

ニュース性が無いというわけではないのだが、閉鎖的なコミュニティーは波風が立つ事を恐れるのだ。

簡単に個人を特定されてしまうからだ。

なにか事件が起こると。

さあ……真実のほどは定かではないが……。と注釈と尾ひれはひれがつき、下手をすれば手足も生えて走り回る。

噂は噂。

しかし、火の無い所に煙は立たない道理で、話せない何かが起こったことは確かである。

そんな噂の吹き溜まりのような地域には、申し合わせたように奇妙で不気味な言い伝えも手伝い、聞いただけでも恐ろしく呪われた場所とされる。

それは田舎暮らしをしている子供たちも例外ではない。

行ってはいけない場所。言ってはいけない話。遊んではいけない子たち……。

私は群れに属さない一匹狼であったので、噂は耳に入るだけで、それについて別に話すこともなかった。

今になって怪談語りをし始めると、色々な話を思い出すものだ。

都会の学校の怪談と違い、田舎の学校の怪談には地元色が強いというか、因習が微妙に混じるというか。

御当地ならではのものがある。

どちらかと言えば、大人たちから奇妙な話を聞くことがあった。

差別的な話も含めて、時代が進めば消えて無くなってしまうものがほとんどであろう。

ご存知の方も多いと思う。

いや、かなり有名どころであるのが、九州きっての心霊スポット犬鳴峠。

御多分に洩れず、散々、そこについての噂は聞かされた。

私にしてみれば、田舎の随所には犬鳴きに負けず劣らずの凄まじい怪談があったと思うのだが……。

殺人事件があったから、と言われれば確かにそうだが、考えてみていただきたい。

殺人事件があっても、表沙汰にならない場所があるとしたら。

考えようによっては、殺人事件が明るみになる自体が拓けている証拠である。

人が殺されようが、消えてしまおうが、全く表沙汰にならない地域があるとしたら?

私が聞いた犬鳴峠の話は、埋もれてしまったまま、表沙汰になることはまずないだろうという、不気味すぎる話だ。

その中の一つは、米麹の職人をしていた老人から聞いた。

家族の者から、もうボケが入ってきてねぇ、と笑われているようなお爺さん。

日本間のお縁で、日がな一日、御茶を飲みながら空を眺めているお爺さんだった。

私の級友の曾爺様で、たまたまその子の家に遊びに行った時のことだ。

相変わらず、ぼんやりと空を見上げている曾爺様の近くで、私は級友と書籍と修繕のことを話し合っていた。

私と級友が話していた内容が、曾爺様の記憶と正気のスイッチを入れたのかもしれないが、何を話していたかは細かく覚えていない。

「あすこは、なぁ……いんだもんがいくところやった」

私は、突然喋り出した曾じいさまに驚いて振り向いた。

級友は、ケラケラと笑って、また、始まった。と言った。

「あすこは、村のもんからはずされたもんがな、いくところち、わしの子どものころも、何人か行かされちから、帰ってこん」

私は、級友に聞いた。

「あすこって、どこ?」

級友は、いかにも可笑しそうにニヤニヤして答えた。

「い・ぬ・な・き・とぉ・げ!!」

あぁ、私は肩を竦めた。

「いんだもんが、なくなるけ、いんなきち」

私は、曾爺様の言葉に、なぜか怖気だった。

お化けが出る、怪物みたいな何かがいる、そんなことは聞き飽きていた。

『いんだもん』つまり行った人が、居なくなるから『いんなき峠』だという。

如何なる理由かで村八分にされた者が、そこからいなくなるから、ということか。

当時の田舎では、コミュニティーから外されるということは、生存できないということであった。

姥捨、生贄など、人は人を死へと追いやることで、自分たちの継続を図ろうとする場合がある。

外された者は、表世界に面した『峠』から、さらに奥深く入って行く。

『峠』は、入り口に過ぎない。

本当に、恐ろしいのは『犬鳴峠』ではなく、その奥。もっと奥にある何処かだという。

そここそが、忌まわしい慣習の大元である『いんなき』なのであろう。

話が不気味になってしまうのは、その何処かへ追いやられた者たちが死んで終わり、とならないからだ。

彼ら彼女らは、外界と接する事なく、獣同然に息衝いているという噂話も聞いたことがある。

獣同然とは言い過ぎでも、地図に載ってない数戸しかない集落。

地図には載ってない山道や朽ちかけて小さな橋。

山郷は人の世界の境界線。

その奥に住まわざるおえない者は様々な事情で人ではなくなっていくものなのだろうか。
 
午後の暖かな日差しが縁側に降りそそぐ。

縁側で、ゆっくりと御茶を飲む曾爺様は、級友と私に思い出話とも、昔話ともつかない話を語り始める。

都市伝説として名を馳せてしまうと、そこに真実の恐ろしさが薄まっていく気がしてしまう。

だが、私が何の縁か、聞いてしまった話や体験談は、やはり都市伝説の域を越えているような気がしてならない。

まあ、信じていただけるか否かはわからないが、怖い部屋を開いたことだし、私が聞いた話を上げていこうと思う。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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