イタリア異聞

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今日は怖い話なんだけれど・・・。

【怖い話】イタリア異聞

イタリア異聞

この話は、イタリアに菓子作りの修行に行っていた青年から聞いた。

彼は、17歳でイタリアに単独で渡った。

仮にA君としよう。

A君は腕の良いパン職人である父親と、まあ、えらく相性が悪く、彼と会う度に父親への文句を並べられたものだ。

横暴で頑固で、俺のことをバカにしているんだ、といかにも若々しい怒りを爆発させていた。

私から見れば、父親もその息子も職人肌で頑固さもそっくりなのだが、それが故の反目でもあったのだろう。

A君の父親は、A君を自分のような職人にしたくなかったらしい。

ある日の夕食前に、将来、パティシエになりたいから専門校に行きたいと言ったことから殴り合いの大喧嘩に発展。

それからというもの、寄ると触ると喧嘩三昧となり、ついに母方の叔父さんがA君を自宅に引き取った。

叔父さんとしては、我が妹が心配のあまりに憔悴していくのを見ていられなかったのだろう。

A君は結局、高校へは行かず、叔父さんに全霊で頼み込んで渡航費用だけでいいから、と金を借り宿願であったイタリアへ行ってしまった。

A君の叔父さんも、なんの伝手もなしにA君を見送ったわけではない。

熱心なカトリック信者であったA君の叔父さんは、若い頃北イタリアの宗教施設に長期滞在していたことがあり、親しい友人もいたらしい。

掃除でもなんでもするからと、3ヶ月間住まわせてやって欲しい、と連絡を取ったそうだ。

A君は、北イタリアにある古い修道院に隣接した宿舎に仮住まいを持てることになった。

どんな生活をしているのか、と心配にもなったが、渡航して1ヶ月ほどして写真が送られてきた。

「はぁ」

A君の部屋を入り口から写した写真には、小窓がある狭い部屋に小さなベッドと机と椅子があり、渡航したままであろうトランクが置かれていた。

中世から、ほぼありのままに残されていたという、巡礼たちの宿泊用の部屋であったらしい。

まあ、寝られて祈りを捧げられればそれでいい、という、質素この上ない造りであった。

ん・・・?

床と同じ色の木の壁に、飴色の十字架が掛けられている。

部屋は恐ろしく古いのに、なぜかその十字架だけは艶やかで目立ったのだ。

黒々とした磔にされた神の子の姿が痛ましいほどに生々しい。

別に西洋にありがちな宗教的装飾品であると言えば、そうなのだが、妙に気になった。

A君に、日持ちのする食品を陣中見舞いに送った時、何気に手紙に書いた。

立派な十字架があるね、さすがは世界遺産クラスの宗教施設だと。

それから1ヶ月ほど経ったか。

A君からお礼状と、自作の焼き菓子が届いた。

やれやれ・・・、元気なら良いと思って、手紙の封を切った。

サリーさん、イタリア、スゲーです!

なんというか・・・。

もう、日本語忘れたか?というような文であった。

最初の3枚の紙には、イタリアへの賞賛と厳しい修行の日常が、スゲー文体で書き綴られていた。

そして、4枚目の紙に。

サリーさんが十字架のこと、書いてたんでびっくりしました。

何をビックリしたのかと言うと、その理由を読んでビックリした。

ここで生活し始めてから、イタリアのお化けで困りました。

イタリアのお化け?

イタリア人のお化け、と言うことか。

毎晩、頭のてっぺんがはげた男が、ボロッボロのかっこでドアから入って来ました。

ふむ、頭の天辺が禿げているのではなく、天辺を剃ったトンスラの男ということは、巡礼者か何かであろう。

はじめは、疲れてるし、慣れてないから変な夢を見てるんだと思いました。

でも、毎晩出てくるんで、怖くなりました。

まあ、そうだろうね。

誰に話しても、こんなこと信じてくれないだろうし、とは言え、他に行く宛もない。

ついにA君は、いつものように現れたてっぺんハゲの男に、怖さのあまり泣き怒りして怒鳴ったらしい。

それも、日本語で。

何度も、出て行ってくれ!と大声で言いました。

しかし、青白いやせ細ったてっぺんハゲの男は、出て行こうともせず、あろうことかA君にゆっくり近づいて来たという。

そして、奇妙な日本語で話しかけて来たらしい。

ぱねぇ・・・ぱねぇ・・・って、なにがぱねぇのかわかりませんでした。

は・・・?!

イタリア人のお化けが、パネェ?

姿格好からすれば、中世の巡礼が幽霊となって出て来たのだろうと予測したが、パネェなどという、チャラい日本語を使う理由が皆目であった。

俺が大声で騒いだので、職員の人たちが来てくれました。

みんなが来てくれたおかげでお化けは消えました。

A君は、職員に全てを話して聞かせたらしい。

しかし、純粋なカトリックは、幽霊の存在を認めない。

その類は、すべて悪霊、悪魔のような存在の仕業である、とされている。

ましてや、神の家である教会の施設に出てくるはずがない、と信じるとか、信じないとかではなく、出るはずがない!と断言されてしまったらしい。

日本人は、信心がないからだとも・・・。

A君は、どうしよう、と困り果てていた。

しかし、A君の父親の長い友人であった職員が、他の職員には秘密だ、とこの十字架を壁にかけておくように、と渡してくれた。

水で薄めたワインと小さいパンを床に置いて寝なさい、と言われてその通りにしました。

A君は、眠れない夜をじっとベッドの上に座り、天辺禿げの男が毎夜、すぅっと現れるドアを凝視していた。
すると。

あのお化けが来ました。

でも、床の上のワインとパンを見つけて、ぱねぇ!と叫んで十字架に向かって祈った後、消えました。

なんだか、パネェくらいうれしかったみたいです

その夜を境に、気味の悪いお化けは出なくなった。
A君は、十字架を毎日、磨いて習わぬ祈りを捧げているという。

A君よ、早くイタリア語を学べ。

その巡礼の幽霊は、腹を空かせていたのだよ。
イタリア語で、パンはパネだ。

飢えた巡礼者にとって、きっと、バネェ嬉しさであったことだろう。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

コメント

  1. アバター寺田了示 より:

    サリードラゴン様
    こんばんは 寺田了示です。

    18日、19日で、真田の郷巡りに行ってきまして、「真田信繁公の供養塔」にお参りして来ました。
    そして、上田城や山家神社など、真田氏ゆかりのスポットも巡ることが出来ました。
    サリーさんに鑑定して頂いたおかげで、繋がったご縁に感謝します。
    ありがとうございました✨
    例の「小刀」がある博物館が見つかったら、また訪ねて行きたいと思います。

    『このご報告だけはしておきたい』

    と思いましたので、書き込みさせて頂きました。

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