行列

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サリーさんが体験した怪談だよー!!

行列

行列

 並んでまで、食べ物屋に入りたくない方である。テレビや雑誌などで取り上げられると人は並ぶ。味がどうのというより、物見遊山で行列ができるのが日本だ。

 この話は、私が東京に住んでいたころの話だ。本ばかり買っていたので日常的に空腹であった。賄い付きの文句に惹かれて、喫茶店のバイトを始めた。

 これで一日一食は確実に食べられる。すばらしい。

 若い頃から、さほどの食事量でもなく、バイト先のマスターからは逆にもっと食え ! と煩く言われていた。

 件の喫茶店は盛大に繁盛している訳ではなかったが、そうそう暇という訳でもない。平日の朝と昼、夕方のピークタイムは何時もの近隣のサラリーマンに決まった数のランチを提供する。休日のピークタイムは戦場さながらに忙しくはあったのだが、それ以外の時間帯は数人の常連客が常時数名。ゆっくりと時間を過ごすような店であった。

 しかし夏休みは違った。学生達が来るのだ。店はダラダラと溜まる場所と化す。平日も長めのピークタイムが続く。ピークタイムが終わっても全然客足は途絶えない。

 マスターは毎年訪れる夏冬の休みと連休は稼ぎ時とばかりに商いに精を出す。

 夏休みシーズンが近づく七月半ば。突然の閑古鳥が喫茶店に来襲した。

 朝から、ぽつり・・・ぽつり・・・としか客が来ないのだ。

 何時もならば、モーニングタイムから昼のランチ・タイムまで、一息つけない客入りであったというのに。ぱったりと客足が途絶えた。マスターは、厨房に山と積まれたランチのセットを前に不機嫌さを隠そうとせず押し黙ったままだ。

 その代りと言うか、なんと言うか。斜向かいの小さなレストランが、大賑わいであった。別に新しく開店したわけでもなく、やや古びたイメージの、まったくパッとしない店構えだというのに、連日の行列だ……。

「いったい、何が良いのかねぇ」

マスターも、その呈を知っているようで、肩を竦めた。

「おつかれさんで~す!」

夜の九時。深夜帯のバイトと入れ替わり、今日のお仕事は終了である。店の裏口から出て、隣の店との間の通路を通り表通り側に抜ける。

 この狭い通路を通ると、今日も仕事が終わったなぁ。と心が切り替えられる。うん、帰ろう。

 普段はそんな事はしないのだが、ふと店の前を見る。

 ん……なんだ……。

 私は思わず立ち止まった。

 人が並んでいる。喫茶店のドアの前に、八人ほどの老若男女が並んでいるではないか。

 おっ、良かったね。今晩のバータイムは繁盛するようだ。忙しかろうが暇だろうが給金に変わりのないバイトである。

 最近の私は、暇すぎるのもバイトの時間が中々過ぎないので、妙に気疲れしていたのだ。それにマスターの不機嫌なオーラが店内で暇を持て余している私に襲い掛かってくる。

 今晩のバータイムは、いつの間にか行列ができるほど盛況のようだ。マスターの機嫌治るのになぁ。それとも私が鈍感力を手に入れないといけないのかな。などと取り留めのない事を考えながら行列に見ていた。

 おかしい……。

 並んでいる者達を、見れば見るほど実に妙である。皆が皆、俯き加減で全く生気がない。

 ダラリと腕を垂らして、今しも座り込んでしまいそうな者もいる。

 夜中のせいか全員が、くすんだ灰色に見えた。行儀良く並んでいるのは良いのだが、あまりありがたくはない。辛気臭い風情である。

 その時、喫茶店のドアが開いて、マスターが現れた。

 あっ !

 ドアが先頭の客にぶつかる ! と思ったからだ。

「おお、まだいたの、さっさと帰って休めや !」

 マスターは立ち竦む私に言った。先頭の客に、ドアは衝突しなかった。スカッと通り抜けたのだ。

 私は、思わず後ずさったが、行列が目指す先は、斜向かいのレストランの前であった。奇妙な行列は、ヨタヨタ、フラフラと移動を開始した。

「はい、帰ります。お疲れさまでした。」

 私は、そそくさとその場を離れた。

 形勢逆転。翌日から、嘘のように客足が舞い戻った。朝から大忙しである。マスターの機嫌も上々だ。

 そんな事が有ってから、私は帰宅時には斜向かいのレストランの前を絶対に見ないようにして帰ることにした。

 あの縁起の悪い行列が、またヨタヨタ、フラフラと舞い戻って来ないという保証はない。

上記のテキストは、Youtubeで朗読している口語文とはちょっと違います

m(__)m

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