もう一人

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サリーさんの東京時代の怖いお話だよ~

もう一人

もう一人

東京に住んでいた時の話。

私が借りていたアパートの住人は、日本人ばかりではなかった。

エレベーターがついていない物件は、屋上階の家賃が安い。

必然的に、私のような赤貧者や、海外から日本に来ている貧乏外国人が、アパートの最上階に集まることになる。

私の部屋の右隣は、生粋の大阪難波育ち。

左隣は、なぜか、ドイツ人であった。

私よりも8歳以上年上で、奥さんと子供は、ドイツにいるという。

皿洗いや、倉庫番などのバイトは、時間的に夜間が多いが、その分、バイト料も多めで、言葉が片言でも大丈夫だから、とドイツ人は、その手のバイトばかり探していた。

8月も終わろうかという、日曜日の午後だった。

「オトナリさん~ !」

部屋から出て来たすぐ、ドイツ人から声を掛けられた。

「あ、こんちわ~」

「コンチワ~、デス~」

身長は、187㎝以上もあり、見るからにゲルマン系な大男。

その日、私はドイツ人から、部屋のドアの前で、妙な話を聞くことになった。

ドイツ人は、ここ何日か、港にある物流の会社から雇われて、倉庫の管理のバイトをしていたらしい。

「ボク、ヒトリて、聞いてたですのに、行ってみたら~、もうヒトリ、いたんやがな~」

同階の隣人の大阪弁が、変な具合についている。

「ああ、それは、やだね~」

勝手な人員増加は、バイト代の差し引きに関わってくる。

「職場の人に言ってみなよ。

黙ってたら、バイト代、差し引かれちゃうかもしんないじゃん」

彼は、肩をすくめて、絵に描いたような外国人ジェスチャーで首を振った。

「そのひと、すぐ、いなくなるんですわ~」

「え~、聞いてない上に、サボり野郎なの ?!」

「う~ん、すぐ、いなくなってまうねぇ~。 倉庫のどっかに行ってまいますねん」

ほう、よくはわからないが。

「給料日、いつ ? もし、引かれてたら、ぜったいに、文句言わなきゃ」

「そうでんな~」

その時の会話は、それで終わり。

で、彼のバイト代が支払われたはずの日の夕方。

「おとなりさ~ん!」

いい加減、私の名前を覚えて欲しいのだが、

いつまでたっても、私は、「おとなりさん」であった。

彼は、にこにことご機嫌である。

聞くまでもないと思ったが、一応。

「どうだった? 引かれてなかった ?」

「もう7回、はたらいてほしいて、言われましてん !」

つまり、もう一週間、はたらいてほしいと言われたわけだ。

「あっ、そうなんだ、で、バイト代は ?」

彼は、すごくうれしそうに、胸ポケットを叩いた。

「だいじょぶやったで~ !」

「仕事場にいた人のこと、報告した ?」

「はい、言いましたら、気にせんでええからて言われたよ」

「ほう」

どう気にしなくても良かったのかはわからないが、とりあえず、ごまかされていなかったのは良かった。

ドイツ人は、雇い主に相当気に入られたらしく、結局、合わせて2ヶ月間以上も、雇われていた。
嵩増しされたバイト料は、ドイツ語教師の給料より割りが良かった。

たまに、彼の言う、もうヒトリの話が出た。

もうヒトリは、毎日、いつの間にか現れて、黙々と荷物の数を数えていると言う。

挨拶をしても、不機嫌そうな顔をして、無視するらしい。

「外国人、きらいなんやわ~」

「ふぅん、失礼なやっちゃね~」

そんな、なかなかのバイトは、突然、終焉を迎えた。

倉庫が焼失したのだ。

彼の部屋にも警察が来たりしたが、火事になったのは日曜日の早朝で、倉庫にも隣にある本社にも、関係者は誰もいなかった。

そして、会社は倒産した。

景気良くバイト代を支払っていたようだが、経営はかなり苦しかったらしい。

ドイツ人は、倒産寸前であったろう会社の遺産的バイト代をそこそこ貯金できていた。

「もうすぐ、奥さんと子どもたち、にほんに呼べまんがな~」

当時の私は、日本がそんなにいい国とも思えなかったが、

とにかく彼はうれしそうだった。

そんなことがあってから半年ほど過ぎたか。

ドイツ人からではなく、別ルートで奇妙な情報が回ってきた。

倉庫の焼け跡から、人骨が発見されていたと言う。

倒産した会社の専務が、殺人容疑で逮捕されたらしい。

「へぇ、知らなかった~」

私は、のんきに答えたが、その話には、お定まり的な「化け譚」があった。

「犯人がさぁ、死体を倉庫の床下に隠してたんだってさ ! あの倉庫のバイト、血まみれ男の幽霊が出るってすげぇ噂でさ、みんな、1日で辞めてくって。それってさ、殺された男が化けて出てたんだろうなぁ !」

なるほど。

嵩増しされたバイト料の魅力でも、恨み骨髄の男の幽霊には勝てなかったわけだ。

しかし、ドイツ人は、外国人嫌いのおっさんとしか、認識していなかった。

妻子を思うゲルマン魂の勝利だと思う。

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