隣人 

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サリーさんの体験した怖い話。与作シリーズだよー!!

隣人

隣人

与作という仇名の友人がいた。

東京貧乏暮しをしていた頃の話。

与作は、激貧バックパッカーで、日本にいるのは、仕方がないから的なイメージだった。

竹下通りで、怪しいアジア雑貨を売る露店商の稼ぎを日々の糧に充てていた。

そんな与作が住んでいたのは、通称お針子通りにある、築50年余のポロアパート。

部屋数は6部屋だが、住んでいたのは、与作と、知らない男が1人だという。

たまに、与作の部屋に遊びに行っていた私は、与作の隣人である知らない男の部屋の前を通った。

「ん・・・?」

誰かが、ドアの向こうにいる、ような気がした。

誰かが、ドアに張り付くようにして、そこにいる、ような。

つい、じっと、古びたシミだらけの木製ドアを見つめてしまった。

「おい !」

私は、びくっとした。

与作が、ドアを開いて、私を見ている。

「どうしたんだよ、来いよ」

「あ、うん」

私は、何かから解き放たれたような気がした。

与作は、客が来る度に、空になったワン・カップの瓶に、成分が不明のインド土産の紅茶を淹れる。

「隣の人さ、どんな人?」

「知らねぇ」

「は?」

「知らねぇ。ここに住んで4年になるけどさ、会った事ねぇの」

呆れた。

隣人であろうが。

「4年だよ、すれ違いもなし?」

「なし!」

なんて奴だ。

「引っ越しの挨拶とかしなかったわけ?」

「しねぇよ、そんなの」

この劣等社会人が。

まあ、確かに。

何度か与作の部屋に訪れたが、隣人と出くわしたことはなかった。

しばらくして、与作と昼飯を食べに行った。

「ああ、そういえば!」

「なに?」

与作は、愉快そうに笑いながら言った。

「見たぜ、隣の住人!」

「へぇ、どんなだった?」

「それがさ、女連れだったぜ」

「ほぅ」

「なんだかなぁ、景気悪そうなって言うか、真っ黒けって感じ?」

なんじゃ、それは。

与作が、露店を片付けて帰宅した時、隣のドアが、ぎいぃっとゆっくり開いたそうだ。

「お」

与作は、開いたドアを見ていた。

すると、俯き加減で、肩を落とし、黒い影のような男女が出てきたらしい。

「なんだかさぁ、黒いんだよなぁ ! こう、もやもやぁっとしてると言うか」

「なんだよ、それ」

「いや、なんかこう、ボヤけてるっつうか」

どうにもわからない。

与作は、表現力の限界を見たのか、まあ、いいや、とばかりに肩をすくめて話題を変えた。

その年の冬、与作は、ぼろアパートを追い出されることと相成った。

致し方ない。

相当なぼろぼろ加減である。

与作は、引っ越し代がない、行く場所が無い、とか散々文句を言っていたが、何十年モノのバッグパックに詰めっぱなしの旅行グッズを持ち、残りのがらくたは、全部、廃棄した。

つまり、引っ越しの準備は、それで完了だ。

「で、しばらくルームシェアよろしく!」

「知るか、馬鹿者!私の部屋も本でいっぱいで、私1人が生活するのも大変な状態だ。

「隙間ないよ!」

「天井裏とか、無い?」

「無いよ!」

などと言い合いながら、部屋を出た時だ。

「ああ、どうも!」

スーツ姿の若い男が、満面の胡散臭い笑みを浮かべて立っている。

「どうも、どうも!」

不動産屋だった。

「お引っ越し、大変ですね!」

どこが、大変に見えるのだ。

ボロいバッグ・パック一個に。

「ああ、大変だよ、行き場ねぇし」

与作が恨めしげに言った。

「いきなり言われてさ、迷惑してんだよ ! 俺だけじゃねぇだろ、ここに住んでんの!」

不動産屋の男は、にっこにこ顔で言った。

「いいえ、OOOさんお一人ですよ」

私は、耳を疑った。

「OOOさんが、最後の居住者様ですので」

「え? お隣さん、引っ越したの?」

不動産屋の目から笑いが消えた。

口元だけが、笑っている。

「お疲れ様です~ ! あ、引っ越し先のお世話もさせていただきますので~!」

まあ、胡散臭い。

ここからは、どこにでもあるような話だ。

このアパートの住人は、3年前ほどから、与作1人だったらしい。

例えば、浮浪者が勝手に入り込んでいたとか?

どうせ、ぼろぼろな古アパートである。

可能性がないわけではない。

与作が見たのは、浮浪者カップルだった?

「あ」

「なに?」

「忘れてた、俺」

「なにを?」

与作は、ケラケラ笑って言った。

「あ~、そうだった ! 3年前、隣でさ、男と女が、ガス自殺したんだったよ」

「へ?!」

「俺が、シンガポールに行ってた時でさ、留守してたからさ、帰ってからさ、警察から教えてもらったんだった、わはははは !」

不動産屋よ、この男に妙な取り繕いは徒労である。

なんて奴だ。

お願いとお約束

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