桜鬼

スポンサーリンク
実話怪談

サリーさんの体験した不思議なお話だよー!!

桜鬼

桜鬼

桜は、美しい。

一本の桜であれ、万本の桜であれ。

桜という木は、人心を掴むものだ。

しかし。

桜の木には、あまり良い喩がない。

「桜の木の下には、屍が埋まっているから美しい」

「庭内に桜の木があると、その家に狂人がでる」

「桜は、人を攫う」

美しさを妬まれてか、ゾクリとするような伝えが残されている。

私が、10歳の頃。

親戚から、その知り合いまで揃った花見が行われたことがあった。

大人数が、舞い散る桜の木の下で、食べたり飲んだりと、賑やかに歓談をしていた。

私は、あまり騒がしい子供ではなかった。

同年代の子供もいたが、これと言って話すこともせず、集まりの隅っこに陣どって、ただ、本を読んでいた。

たまに気を使った人が、仕出しの料理から、子供が好みそうな料理を持ってきてくれたりしたが、それにも手をつけないまま、ただ、本を読んでいた。

午後から夕暮れになり、薄桃色の花空も、煙るようにぼやけてきた。

「ふぅ・・・」

私は、何気に本を閉じ、顔を上に逸らして、桜を見上げた。

「ん・・・?」

妙なモノを見た。

見た、というよりも、目が合ってしまった。

花に埋もれる枝振りの上から、真っ黒い子供が見下ろしている。

夜桜になろうとしている辺りよりも、その子供は、黒かった。

だれだろう・・・?

桜の枝は、折れやすいという。

よく、あんな枝端に登れたものだと思った。

じっと見上げていると、子供は、くるりと横を向いた。

宴に集う者たちを見ているようだ。

ん ?

見間違いであろうか、と思った。

真っ黒い子供の頭の天辺に角がある、ように見えた。

私は、薄暗がりになりつつある中、目を凝らした。

見間違いではない。

やはり、角がある。

まるで、小鬼か何かのようではないか。

やがて、その真っ黒い小鬼のような者は、するするとさらに枝端にに移動し、知人が傍で寝かせていた赤ん坊の真上に来た。

何をするつもりだろう ?

「あ」

右手が、ぬぅ、と伸ばされた。

その右手は、すやすやと眠っている赤ん坊の、すぐ額の上辺りまで伸ばされた。

「おばちゃん!」

私は、思わず赤ん坊の母親を呼んだ。

「なぁに!」

母親が私に振り向くと、伸ばされた手は、ひゅっと引っ込められた。

真っ黒い小鬼の恨めし気な眼差し。

「いや、なんでもない、ごめん」

母親は、再び、歓談に加わった。

真っ黒い小鬼は、湿った嫌な眼差しをしたまま、桜の天辺へと消えた。

随分と後になって聞いた話だが、その公園では、子供の行方不明が、3人。

全く手掛かりのないままであったらしい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました