海鳴り

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今日のお話は、サリーさんが溺れちゃうそうになるお話だよー!!

海鳴り

海鳴り

これは、私が15歳の時に体験したことだ。

いつもなら、絶対について行かないのだが、アメリカから、父方の叔父が遊びに来ていたので、温泉旅行に連れて行かれることになった。

まだ、小僧もいいところだったので、不機嫌を隠そうともしていなかったと思う。

うざったい親戚関係の群れから離れて、一人で持参した本を窓辺で読んでいた。

たまに目を上げれば、窓の向こうに温泉街が見えた。

レトロな風景写真を見ているようで、少しだけ、不機嫌が緩和されたものだ。

この風景と温泉は、悪くない。

読みかけの本を置いて、一人で勝手に温泉に入りに行ったりした。

温泉の匂いと古い家屋の匂いが心地よく混じり合って、たまに天井から滴り落ちてくる雫がはじける度に柔らかく漂う。

私は、温泉の浴衣が嫌いなので、履き古したヨレヨレのジーンズとTシャツに着替えて、部屋に戻ると、また本を読み始めた。

さすがは、温泉の効能。

体がゆるゆると緩まり、次第に眠気が差してきた。

時計を見れば、夕食まであと3時間ほど。

私は、ゴロンと大の字になって目を閉じた。

山間の森を吹く風の音、小鳥の声と遠い街の賑わう音が私の意識をぐんぐんと深く、眠りの中へと引き込んでいく。

多分、だが。

私は、夢の中で目を覚ました。

茶けた天井の板は、眠る前にも見た。

あ・・・。

誰かが私の横合いに正座している。

膝辺りが私の投げ出されている腕に触れそうな近さだ。

誰だ・・・?

おそらく女性、であろう。

結婚式に来ていくような、黒い着物を着ている。

しかし、奇妙なのは、頭にすっぽりと、藁を荒っぽい編み方をして作ったかのような籠を被っているのだ。

声を出そうとしたが、喉が詰まったように出ない。

カゴの様なものを被った誰かは、じっと私を見下ろしている様に思えた。

体が動かない。

声すらも出ない。

金縛りって感じか・・・。

そして、何かの音に気がついた。

どおぉ~~・・・

どどおぉ~~・・・

どおぉ~・・・

お腹の底に響く様な音。

低く、重く、耳の奥に入り込んでくる。

遠くから、大きな音を聞いている様な感じに思えた。

なんの音だろう。

聞いたことがあるが、思い出せない。

その音は、座っている誰かの背後から聞こえてくる。

どおぉ~~・・・

どどおぉ~~・・・

どおぉ~・・・

ざざあぁ~・・・

あ !

思い出した。

海の音だ。

海鳴りが聞こえてくる。

思い出した途端、その音は大きく、大きくなってきた。

まるで、すぐそばに海がある様な、

いや、海辺で寝ている様な。

どおぉ~~・・・

どどおぉ~~・・・

ざざざぁ~・・・

強い潮風と海鳴りの声。

ここは山間の温泉だったはずだ。

海なんて近くにもない。

それなのに、大気を震わす様な海鳴りが聞こえるものか。

だが、あまりにはっきりと聞こえるものだから、

溺れてしまいそうな錯覚に囚われた。

そう思うと、耳の辺りが波に触れている様な冷たさまで感じた。

これは、夢だ、悪い夢を見てるんだ。

私は、目を固く閉じて、必死で目覚めようとした。

そんな、馬鹿な、そんなはずない

どおぉ~~・・・

どどおぉ~~・・・

ざざざぁ~・・・

ざざあ~・・・

息苦しくなってきた。

まるで、潮が満ちてくる只中で仰向けになっている様だ。

ついに、冷たい波頭がざぶりと顔に打ち寄せて来た。

は、ぅっっ!!

揺らめく水の中から見上げると、私の傍らに正座していた女が見えた。

ゆっくりと両手を上げて、少しだけ被っていたカゴを上にあげた。

にやり・・・

真っ赤な唇がにやり、とした。

私は、カボカボと水の中で空気を吐き出したが、それと同時に、冷たい海水をがぼりっと喉へ通してしまった。

「ぐはっ!」

私は、弾ける様に半身を起こして、喉に入り込んだ水を吐き出した。

いや、そんなはずはない。

周りには誰もいないし、眠った時と同じ、座敷の部屋だ。

海鳴りなんて聞こえてこない。

悪い夢にしたかったのだが、私は実際に畳の上に潮臭い水を吐いていた。

全身が冷たく冷えて、グタグタに疲労している上に、喉と口の中がひりつく。

髪はしっとりとベタついていた。

私は、フラつきながら、もう一度、温泉に入りに行った。

何が起こったのかなんて、まったく、考える事が出来なかった。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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