銀嶺 其の一

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今日はお着物のお話だよー!

【怖い話】銀嶺-其の一

銀嶺 其の一

美術館で、監視のバイトをしていた時の話だ。

油絵の会の会員であり、アンティークの着物の収集家である女性が、着物の個展を開くと言う。

受付をやってほしい、と頼まれた。

「あ、いいですよ」

仮に、Y女史としておこう。

Y女史は、着物を着るのも、集めるのも大好きで、特にアンティークの価値が高い、

着物をコレクションしていた。

その日も、モダンな柄の着物を召していらした。

「素敵なお着物ですね」

Y女史は、うれしそうに微笑んだ。

私は、展示物の搬入が終わって、展示の手伝いをしていた。

「え・・・・?!」

Y女史の驚いたような声が聞こえた。

振り返ると、Y女史が箱に蓋を開けたまま中を凝視している。

「何か、ありましたか!」

荷物を運んできたスタッフが、慌てて近づいていくと、Y女史の顔色は、まさに青褪めていた。

「この着物・・・、誰が持ってきたの?」

誰も何も。

本人がチョイスした出展品しかないはずだ。

「あ、あの、出展用の荷物の中に入ってましたが」

スタッフは、Y女史の、怒っているような、不安極まりないような、妙な顔つきになっていた。

「うそ・・・」

Y女史は、ぼそっと呟いた。

「どうかしたんですか?」

私は、箱の中を見た。

わぁ・・・!

何とも美しい。

真白い着物に、品の良い銀色の刺繍が、ふんだんに入っている着物が入っていた。

吹雪を表わす繊細な織り目に、照りを抑えた銀糸の刺繍は真冬の連山を描いている。

「珍しい柄ですね」

純白に銀糸の刺繍など、相当の職人芸だ。

しかしY女史は、とてつもなく不吉な何かを見る目をしていた。

「どうして・・・、どうして、これが・・・」

回りの職員は、どう対応してよいかわからないまま、黙って見ていた。

「入れてなかったんですか?」

Y女史は、いきなり、箱のふたを閉めた。

「これは、展示できないから!」

Y女史の迫力に、誰も意見はしなかった。

ただ、その後Y女史の顔色は、一向に良くならない。

例の箱を大風呂敷で包み、展示場の片隅に追いやるように放置していた。

たまに、穢れを見るかのように、ちら、ちら、と目を配っていた。

展示を終えたのは、夜半、10:00を過ぎていた。

「おつかれさんです~!」

「どうも~!」

Y女史は、帰ろうとしたスタッフの一人の腕を

いきなり、がっしりと捕まえた。

それも、鬼気迫ったような表情で。

「あの!
あの、箱、私の家まで、運んでくれない!」

スタッフは、驚いてY女史を見ていた。

いや、みんな驚いた。

たった一枚の着物のために、美術館のスタッフに、家まで送ってくれ、など。

たしかに、名のある収集家であり、和装の大家でもあるのだが。

「あ、はい、いいですよ」

スタッフは、怪訝気であったが、社会的地位の高い人間からの物言いに、逆らえなかった。

Y女史は、スタッフに箱を持たせて、挨拶もそこそこに展示場を出た。

翌日。

Y女史は、ひやひやするほど、大遅刻をしていた。

お客様が、もう、何人もいらしていたのだが、当のY女史とは、連絡もつかずスタッフも、あたふたしていた。

結局、4時間遅れで、展示会に到着したY女史は、 一晩しか経っていないというのに、げっそりとやつれていた。

「大丈夫ですか? 具合、悪いとか」

Y女史は、額に手を当てて、気だるげに首を振った。

「大丈夫だから。うん、大丈夫」

全くそんな風には見えなかったが、仕方がない。

展示会の前だから、疲れが出たのかなと。

しかし、昨日のY女史の行動は、誰が見てもおかしかった。

そして、思わぬ人から、信じられない話を聞かされてしまった。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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