テングちゃん

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サリーさんの体験した不思議なお話だよー

天狗ちゃん

テングちゃん

高校生の頃。

幼稚園で、絵本を読むバイトをやっていた。

はじめは、絵本なんぞまったく聞いてくれそうになく。

永遠に暴れ回っているのではなかろうかと、すんなり信じられてしまうような子供らを
呆然と眺めていた。

福々しい笑顔の園長先生は、実に穏やかにして、冷静。

「聞きたい子だけでいいの。聞きたい子たちだけに読んであげて」

奇声をあげ、跳ね回り、突っ走る。

それも、飽きる事なく。

疲れを知らぬその様は、まさに、怪獣であった。

そんな中に、一人だけ、変わった子供がいた。

チカちゃんは、大人しい。

いや、大人し過ぎる子だった。

炎のように暴れ回る怪獣どもを、隅っこに膝を抱いて座ったまま、じっと見ている。

「チカちゃん、絵本の時間、始まるよ、おいでよ」

私が話しかけると、私をまったく見返る事なく、黙って立ち上がり、お話を聞きたい数人の子供たちの後ろに座り込む。

別段、絵本のお話を聞きたい風でもない。

ただ、呼ばれたから、来た的な感じであった。

「だるまちゃんとテングちゃん」

名作とうたわれた絵本であるが、私はあまり、好きになれない。

それは、チカちゃんの思い出のせいでもある。

何事にも、無反応、無感動だったチカちゃんが、唯一、強い愛着を見せたのが、「だるまちゃんとテングちゃん」だった。

私は、チカちゃんが、ようやく興味を示してくれたことに気を良くして、何度も絵本の時間に選んだ。

だが、相変わらず、くすりとも笑わない。

それでも、絵本の時間になると、自分から、「だるまちゃんとテングちゃん」を持って来た。

ようやく、チカちゃんと仲良くなれたような気がしたものだ。

しかし。

おかしな話を聞かされた。

「チカちゃん、ちょっと、怖いんですよね」

若い保母さんが、4人ほど働いていたが、その間で、妙な噂が囁かれていた。

私の幼稚園の滞在時間は、2時間少々であり、そんな噂があるとは思いもよらなかった。

「何かあったんすか?」

いつも、水底に沈んだ小石のように大人しいチカちゃん。

そのチカちゃんが、度々、お道具倉庫に入り込むことがあるらしい。

「それが、とてもじゃないけど、チカちゃんとは思えなくて」

チカちゃんが、お道具倉庫の中で、暴れ回っているのを見たという。

「へ ? あのチカちゃんがすか ?」

私は、到底、信じられなかった。

「はぁ、まぁ、子供ですからね~」

私は、聞き流していた。

目の前にいる、膝を抱いて、床の上に座ったままのチカちゃんを見れば見るほど、信じられない。

「何かの間違いだろ」

しかし、認めざるを得ないこととなった。

園長先生から、紙芝居をとって来て、と頼まれた私は、お道具室に向かった。

「キャキャキャ !」

私は、どきっとした。

お道具室からは、子供たちの大騒ぎする声は、遠くからしか聞こえないのに。

「きゃははははっっ!」

「きゃあ ! あはははは!」

どこか鋭さすら感じる子供の歓声が聞こえる。

お道具室からだった。

私は、噂を思い出した。

まさか・・・チカちゃん ?

何とは無しに、ドアの影に隠れるようにして、中を見た。

チカちゃんだった。

それも、あのチカちゃんからは、まったく想像できかねる暴れ回り様だ。

額には、前髪が汗に濡れて張り付き、脅かされたウサギか何かのように、激しく走り回っている。

「きゃあ ! あははは、きゃあ !」

チカちゃんは、狂ったように、大声で笑いながら、積み上げられた段ボールの箱の上や柱の周りをぐるぐると回り、両腕をいっぱいに伸ばして、突っ走り回っている。

追い駆けている?

そう見えた。

なんにしろ、その有様たるや、到底、声をかけられそうになかった。

ずでん!

チカちゃんが、思いっきり、転んだ。

「あ」

私は、我に返って、チカちゃんに駆け寄ろうとした。

だが、チカちゃんは、くるっと立ち上がりゼイゼイと息を荒くしながら、叫んだ。

「こんどは、テングちゃんがオニね !」

私は、中に入ることができなかった。

幼児期に、「見えない友達」ができる場合があるという。

チカちゃんのように、人間関係の形成が、まったくできないタイプには、ありがちなことなのかもしれない。

私の知っているチカちゃんは、そこにはいなかった。

「きゃあー ! きゃははは !」

チカちゃんは、誰にも見えない何かと、狂ったように追い駆けっこをしていた。

私は、そのまま、その場を立ち去った。

その日から、1週間後。

お話の日に、絵本を読みに、幼稚園に行った。

チカちゃんは、床の上に、ゴロンと仰向けになったまま、お話を聞きに来ることはなかった。

私は、絵本を読み終えた後、チカちゃんに近づいて聞いた。

「チカちゃん、ねぇ、いつも、誰と遊んでるの?」

無視されるのは、いつものこと、と、思っていた。

ところが。

チカちゃんは、仰向けになったまま、くるっと私の方を見た。

どきっとした。

チカちゃんの目の奥に、針のような光が見えたような気がした。

チカちゃんは、半身を起こして、右手を口の端に当てた。

ひそひそ話を聞かせるように、小さな声で、私に言った。

「テングちゃんは、あんたのこと、きらいだって」

チカちゃんは、凍りついた私を残して、隅っこにいってしまった。

お願いとお約束

怪談朗読をされておられるYoutuberの方々。
サリーさんの怖い話を朗読していただけたら幸いです。
その時は、一言ください。そしてHPのリンクを貼ってください。
約束だよ!!

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