怪談「焼きそばパン」text version だよ

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実話怪談

サリーさんが体験した怪談だよー

焼きそばパン

「やきそばパン」

高校時代にありがちなのが、売店の激戦区化である。

 いい若い者であるからして。噛み付くと、冷たい脂が染み出すカレーパンやソーセージパン、油っこい揚げ物や、ほぼマヨネーズであろうポテトサラダ。冷え切った焼きそばなどを挟んだパン。喰い盛りの子供らをターゲットにした品揃えだ。

 その中でもダブルで炭水化物が摂取でき、腹もちの良い焼きそばパンは、人気で大人気だ。古今東西の歴史を紐解いても食い物の恨みは怖い。不要なトラブルを避けるために、本校の売店では一人二個までという決まりがあるほどだ。

 おかげで、購買戦争に敗北した者には、油分と炭水化物のコラボレーションがかもしだす、胸が悪くなるような旨さを味わえない悔しさをバネに、明日こそはと決意するわけである。

 高校時代の私は小食であり年寄り臭かったせいか、脂っこい総菜パンは食さなかった。また、体格にも体力にも恵まれなかったので、欠食高校生の本能が形作る人の壁を乗り越える気はさらさらなかった。いゃ無理というものであった。

 私にも好みはある。バター付きトーストが大好きである。しかし、程よく焼いたトーストなど、学食では望め要はずもない。

 飢えた少年少女たちが、胃袋から指令されるがままに組んだスクラムが解かれるまで、後方で待っているのが日々の昼時の過ごし方であった。

 あの日は、午後から図書館で読書会が開かれることになっていた。そんな日に限って、腹を空かせた同級生の壁は、なかなか散開しなかった。

 このままだと、昼飯抜きだな。などと考えながら、ぼんやりと人垣を眺めていた。

 ようやく壁が薄くなってきた。やれやれと腰を上げた。しかし、残り時間は、15分少々しかない。

 人気のないパンでも良いから、さっさと食べて図書室へ行こうと思った。

 アッ……。

 パン箱の隅っこにポツリと焼きそばパンが在る。ハイエナ、ハゲタカ、ピラニアの群れを潜り一つだけ残されている。

 まっ、たまにはいっか。

 私は、焼きそばパンに手を伸ばした。すると、私の背後からニョキッと腕が伸びてきた。

 オッ……!

 制服を着た妙に白い手が、最後に残った焼きそばパンを掴んだ。

 アッ !

 私の真後ろに誰かがいたらしい。全くわからなかった。

 まあ、いいや……。余っていた潰れ気味のメロンパンを買った。何時もならば、別に惜しくもないのだが、目の前で攫われるとなると腹も立つ。

 焼きそばパンが、どうしても食べたかったわけではない。人気のパンが意図せず手に入るという期待が奪われたショックに、ムカッとしてしまった。

 私が掴み損ねた細やかな幸運を、どんな奴が奪い去ったのだ。そいつの顔を確かめてやる。私は柄にもなく、満面に不機嫌な表情をしたまま反射的に振り向く。

 ん……誰もいない。

 無意識に眉間に皺が寄る。数秒前の風景を思い出す。

 焼きそばパンを攫った腕の制服だが、同じ学校のものではなかったような気がする。

 それどころか記憶の中の制服は夏だというのに、深い紺色に赤い細いラインが入った冬服ではなかったか ?

 あまつさえ、お金払ってなかったよね……。

 パン箱に視線を戻すと、そこにはポツリと焼きそパン。今思えば、御足がなければ致し方ないなと。

上記のテキストは、Youtubeで朗読している口語文とはちょっと違います

m(__)m

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