よゐこ堂奇譚-与作の話

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今日は与作のお話だよー

【怖い話】よゐこ堂奇譚 与作の話

良い子堂奇譚

与作は、日本にいる間、様々なバイトをして旅費を貯める。

一つの職種で働き続けていると飽きがくるから、と言う。

飽きてくれば必然的に勤務態度は悪くなるし、雇われている自分の為にも、自分をやっている側にもいい事がない、と言うのが、与作の持論だ。

海外にいる時は早朝に起きても全く平気な奴だが、帰国した途端、血圧が急降下するらしい。

「朝から仕事なんて、信じらんねぇ」

この国の大半は、そうだが、何か?

与作は、昼過ぎまで使い古いしたマットの上でゴロゴロ、ウダウダとし、午後16:00くらいからようやく動き始める。

与作の部屋には、冷蔵庫や調理する道具が一切ない、つまり自炊をするつもりなんてハナからない。

一日三食取ることは滅多になくバランスが悪いことこの上ない。

無い無い尽くしの不健康さだ。

「なぁ、飯食いに行こうぜぇ」

与作の「飯」を賄ってくれているのが、近所にある極安食堂「よゐこ堂」だ。

塩辛いだけのヤキソバ、出汁が真っ黒だが薄味すぎるうどん、生姜焼き用の豚肉一枚に職人的技巧を感じさせるぶ厚い衣を着せたトンカツ、ところどころ赤くないチキンライスなど。

貧乏暇なしには選ぶ権利も無しである。

まさに、安食堂の醍醐味が満載だ。

あれは、与作がなんとか最低旅行費を貯められた日のことだった。

「おしっ! しばらく食えねぇからな、よゐこ堂に行くべ!」

別にしばらく行けなくても全くもって名残惜しくはない味のよゐこ堂。

秋も深まった夕方18:30、私たちはよゐこ堂へ向かった。

夕闇の中では廃虚と見まごうよゐこ堂の入り口は、地域文化財指定も夢ではなさそうな戦前製のガラス戸で、夕刻になるとオレンジ色っぽい灯りが切な過ぎる風景だ。

「お、なんと!」

与作が愉快そうに声を上げた。

「ほぅ」

私も思わず言った。

よゐこ堂から、老若男女がゾロゾロと出て来たからだ。

こんな風景は、私がよゐこ堂と出会って以来、はじめてである。

濃い紫色が闇と混じり合う中、私たちは何気にその人たちを見ていた。

「腹へったぁ、早く入ろうぜ」

与作がヘラヘラ笑いながら言った時だった。

私は、全身の鳥肌が総立ちになった。
与作の細マッチョな腕を荒っぽく掴んで止めた。

「なんだよ、おい、行こうよ」

私は、与作の腕を引っ張って後ろに退いた。

よゐこ堂から出てくる者たちの列が止まらない。

ゾロゾロと憔悴しきった者たちから異様な焦げ臭さがして来た。

ヤバい、これは、ヤバい。

その内、足を引き摺る者、よたよたとよろめく者、ぐったりとした赤ん坊をだいている者、と、
その時代にそぐわない風体の者たちの群れがよゐこ堂からあふれ出してくる。

「おい、行かねぇのかよ」

与作は不満げだ。

いや、そんなことはどうでもいい。

私は、黙ったまま与作を引っ張ってその場を足早に去った。

翌日、与作を空港へ見送りに行った帰り道、よゐこ堂の前を通ったのだが、例の骨董価値があるであろうガラス戸に白い紙が貼ってあった。

何かが書かれているようだが、どうにも店先に近づくことが出来ない。

足がよゐこ堂に向かって進んでくれないのだ。

私は、踵を返して近所の中華屋に入った。

中華屋のおかみさんから前の日の昼、店主が急死したと聞いた。

つまり、昨日は店は開いていなかったのだ。

安さと不味さの伝統は、幕を下ろしたわけである。

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